2013年8月8日木曜日

なぜ血圧40の危機的な状況で行った努力が鹿児島県国保では否定されるのでしょうか

 医療機関は、新規開業後等に現在は厚生局が行う集団的個別指導というのを受けます。集団的個別指導って変な言葉だと思いますが保健医療機関では当たり前の言葉です。当院も数年前に受けました。会場には医師会の担当理事という方も来られており、正しい保険診療の方法などを指導されます。

 数年前に指導を受けた時に驚きました。医師会の担当理事は保険診療は療養担当規則に基づいて行うものだから医学的に正しい治療であるとかガイドラインがあるとか、エビデンスがあるとかは関係ない、規則通りの医療を行わなければならないと言われました。療養担当規則に反する正しい医療をしたいのだったら自由診療をしろとも言われました。がっかりです。医学的に正しい診療ができるように療養担当規則を見直すように医師会は働きかけてゆくというのなら応援できますが、私も医師会員ですが正しい医療ができなくてもお上の言うとおりの医療をしろ等という組織を応援する気にはなりません。

 こんな指導を受けているので、ガイドラインやEBMに沿いながらも療養担当規則通り、薬剤であれば用法・用量通りの診療を心掛けています。

 昨年12月にIABPを使用した患者さんのIABPが査定されたことでFB上でぼやいたことがありますがまだ納得がいきません。重症3枝病変で冠動脈造影しただけで血圧40のショックになった方です。IABPを使用して虚血が改善するとバイタルも安定した方です。血圧40で危機的な状況で使用して査定されるとは思ってもいませんでしたから何故、査定されるのかと国保連合会に問い合わせました。返ってきた返事は「現時点では保険診療上認められていません」というルール上の問題だという返事です。なので心カテーテル検査時のIABP使用に制限があるのか保険診療の解釈本を見ますがそんなことは書いていません。IABPの項目を読んでみても挿入に伴う画像診断は算定しないとあります。冠動脈造影はIABPを挿入するための画像診断ではありませんし、仮に挿入に伴う画像診断と解釈したのならカテーテル検査を査定すべきでIABPは査定すべきではありません。そこでもう1度、国保連合会に問い合わせました。保険診療として認められないのは何故かというのが質問で認められていませんというのは答えになっていないし、ルール上の算定できないというルールは存在しないではないかと質問しました。担当者の事務職員は確かに算定できないというルールはないと返事を頂きましたが、査定されたのは医学的な判断でしょうから事務職員では分からないと言われました。

 ある時にはルール通りに診療しろと言い、ルールにない査定は医学的な判断ですからというようなダブルスタンダードです。何故、審査医は血圧40のショックの方の救命に立ち向かっている診療をルールがないにもかかわらず査定するのでしょうか?こうした査定をすることで危機的な状況でIABPの使用をためらうような土壌ができ、患者の生命が脅かされはしないかと思われないのでしょうか。保険診療として認めるか否かはお金の問題ではなく医療の質や患者の生命の問題であると思っています。査定が目的化し、医療の質が二の次にされることに不安を覚えます。

 循環器医がよく使うアミオダロンは使用後に甲状腺機能をチェックしろと添付文書に記載されています。鹿児島県国保では薬剤による甲状腺機能低下の疑いと病名を追加しなければ査定されます。ステント植込み後のDAPT使用後2週間での白血球数や肝機能をチェックしたのも査定されました。査定を避けるためにカルテは余計な病名が増え続けます。

 用法用量通りの診療でさえ査定されても概ね我慢してきました。しかしショックの患者にIABPを使用して、保険診療では認められないと解釈本にもない回答をもらって我慢はできません。

説明を求め続けたいと思っていますが、こんなやり取りに疲れない訳ではありません。ショックの患者にIABPを使って頑張っても過剰な診療、不要な診療と言われる鹿児島県で診療を続けてゆけるのか心配です。

2 件のコメント:

  1. swimming-doctor2013年8月13日 16:00

    いつも楽しみに拝見させて頂いております。当方も立て続けに2件LMT-AMIが来院されIABP back upでPCIを施行しました。勿論これらは保険償還に問題なかったのですが、重症3枝・Low EFに対するElective PCIでのIABP standby使用は神奈川でも承認されなかったケースは多くあります。理由はショック状態になっていないにも関わらず使用したから適応外とのこと(仕方ありません)。逆にいえばIABPを使用したからショックに至らなかったと解釈してほしかったのですが・・・。問題は同様なケースでも査定医よって判断が違っていることが不思議なところです。貴先生も御体には気を付けて頑張ってください。応援しております。

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  2. コメントをありがとうございました。ブログを更新しましたが鹿児島県ではショックであっても査定されます。どんな鹿児島県の医療を作りたいのか理解できないです。こんな県で頑張れるのかとも思いますが、頑張ります。

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