Monday, February 9, 2015

バッターのように考えるか、ピッチャーのように考えるか? PCI術者の成功にいたる思考

随分と久しぶりの投稿です。

ホームランバッターではないけれども打率はコンスタントに良好で、出塁率が高い選手がいます。そんな選手が珍しくサヨナラホームランを打ったとします。勝利に貢献して結構なのですが、打撃コーチはこのサヨナラホームランを契機にフォームが変わり打率が落ちないかと心配するかもしれません。目の前の勝利に貢献したことが長期の視点で見てマイナスになるかもしれないという懸念です。サヨナラホームランという一事象にも良い面とひょっとすると悪い面との両面が存在します。ですから一面的に捉えずに多面的に物事を見なければならないなどともよく言います。しかし、この事例では一事象における多面性というより良い効果と悪い効果という表現がふさわしいのかとも思います。医療の分野における期待される効果と副作用のような関係です。

業績の悪い企業でたまたま企画が大当たりするとクリーンヒットだったよねとか久々のホームランだったね等と成功を打撃に例えて表現することがあります。ホームランやヒットは多くの場合ポジティブなイメージです。

そうした感覚で話を聞いていて驚かされました。1/31に東京で開催された冠動脈の慢性完全閉塞の講演会で講演されたO教授が、PCIにおけるホームランとは、ガイディングカテで冠動脈解離を作るようなことだとホームランをネガティブな表現として話されたからです。珍しいパターンだと感じましたが、攻撃側から考えればホームランはポジティブですが、守備側や投手から考えればホームランはネガティブなことに違いはありません。こうした見方こそ効果と副作用というような多面性とは一味違う本当の多面性だなとこの1週間頭を離れません。

うまく完遂できたPCIをヒットやホームランと例えるのか、凡打や三振に打ち取ったと例えるのかどちらがそれらしいのだろうかと考えます。一試合で20本も30本もヒットが出る確率は存在しますが、延長にならない限り勝利を導くのは27のアウトです。一つのPCIの成功の過程はヒットを重ねることではなく着実にアウトを積み重ねる方が確かに近いような気がします。止めたバットに当たってヒットが生まれることはあってもまぐれのアウトや勝利は守備側から見れば起こりそうもありません。ヒットを積み重ねるよりも確かに確実なアウトが重要だなと感じます。

O教授のPCIのご講演で拝聴した成功の蓋然性を高めるあるいは成功を必然に近づける考え方の多くに感銘を受けましたが、この投手のように考える思考パターンも大きなインパクトでした。

当たり前のことですが、優れた術者には凡人とは異なる優れた思考パターンが備わっているのだと再認識です。