Saturday, August 29, 2020

明後日、2020年8月31日に66歳になる私が触れた安倍晋三総理の辞意表明

2020年8月28日、在任日数最長の安倍晋三首相が辞意を表明されました。必ずしも支持していたわけではありませんが、感じるところがないわけではありません。

安倍総理は1954年9月21日生まれ、おとめ座です。私は1954年8月31日生まれ、やはりおとめ座です。潰瘍性大腸炎は必ずしも加齢の問題ではありません。若い方でも苦労されている方は少なくありません。とはいえ、年齢を重ねて病を得て職を継続できない姿は他人事には思えないのです。私も昨年の8月には胆石で初めての入院や手術を経験し、いつまでも病気とは無縁ではないのだと実感したところです。明後日(2020.8.31)に私は66歳になります。冠動脈のカテーテル治療の現役医師としてはもう、九州で最年長です。最年少で現場を任されているのであればその後の未来は、長く輝かしいのでしょうが、最年長であればリタイアの時期や現役の去り際を意識しないではおれません。

第一次安倍内閣発足は2006年9月です。全くスケールは異なりますが鹿屋ハートセンターの開設も2006年10月です。2006年9月は開設直前の準備で忙しかったことを思い出します。同年齢ですから自分の人生の節目と重なるのは当然ですが、安倍総理の節目と私の節目も何か重なります。同時代を生きている人物が志半ばで病のために職を継続できない姿はやはり切ないものです。

でも命を失ったわけではありません。総理としてではなくてもできることはあるはずです。残りの人生もさらに意義のあるものになるように祈っています。昨日(2020.8.28)、辞意を固めるというニュースが流れる中、私は3年前に発症の心筋梗塞の方の慢性完全閉塞の左冠動脈前下行枝のカテーテル治療の最中でした。側副血行が少なく、逆行性のアプローチができそうになく、うまくいくだろうかと心配しながら順行性のアプローチで治療に臨みました。隣に立つ鹿大の先生の前で恥ずかしくない手技をしなければという思いもありました。そんな風に考えるのもやはり年齢を意識してのことだったなと思います。幸い、治療はスムーズに成功裡に終わりました。治療が終わりホッとしたところで知ったニュースです。まだまだ若い連中には負けないという気持ちよりも、恥ずかしくない現役カテーテル治療医としての去り際をいやでも意識させられるニュースにふれ、少し心は揺れています。
 

Wednesday, August 26, 2020

医師会発行の感染症対策実施医療機関のステッカーを手に入れました。

日本医師会が発行している感染症対策実施医療機関のステッカーを入手しました。東京都の飲食店が掲示するレインボーステッカーと同様にセルフチェックで入手できます。東京ではレインボーステッカー掲示店でのクラスター発生がありましたが、同じように医師会発行のステッカー掲示の医療機関でもきっとクラスターの発生はあるだろうなと考えてしまいます。セルフチェックだし、どんなに気を付けても感染はゼロにはならないからです。だからといって気をつけることは無駄だとは思いません。

掲示があるから安心ではないと思っています。ステッカーを得るためにセルフチェックをし、しなければいけない対策を確認し、実行することには意味があります。また、掲示がある医療機関であっても、来院される患者さんの協力がなければ意味はありません。ですから、きちんとルールを守ってくださいと言い続けることが大切だと思っています。

鹿屋ハートセンターでは前回のブログに書いたように毎朝、患者さんに協力をお願いしていますが、話を聞いた患者さんから、使いまわしの週刊誌が置いてある医療機関や、入れ替わり使用する血圧計が無造作に置いてある医療機関もたくさんあると聞かされます。ステッカーを得ることをきっかけに各医療機関の意識がさらに高まるように期待しています。
 

Saturday, August 22, 2020

安心して受診していただくためには、安心して受診していただけるように努力し、その姿を見てもらわなければいけないと思う

 図は、少し前にFacebookにあげた、毎朝診察前に待合室で患者さんにお話ししている姿です。3月26日に始めたのでほぼ5か月が経過しました。待合室やてすり、ドアノブやトイレは職員の手で毎日清掃し、アルコールで拭きあげていることなどを説明しています。また、職員の努力だけでは足りないので、来院される方にもマスク着用をお願いし、来院時にも帰る時にもアルコールで除菌してくださいとお願いしています。時には、拍手を頂くこともあり照れくさいひと時です。受診のたびに聞かされるのですから「また同じ話か」と言われることもあり心が折れそうになることもありますが、もういいやと思うと気をつけようと思う気持ちが私も患者さんもなくしてしまうのではないかと思い、やめられません。

今朝は、「マスクなんて必要ない」、「コロナなど死亡率も低く恐れるほどの病気でもない」、「ワクチンなんかあてにならない」などという医師もいるが鹿屋ハートセンターでは対策を続けていきたいとお話ししました。

飲食店を例にとります。対策なんか意味がないと店主が言い、密の状態で皆が使いまわすトングなどを使って飲食を提供するお店があったらそんな店に行こうと思う人はいるでしょうか?コロナパーティーを開こうなどという人は行くかもしれませんが多くの人は敬遠すると思います。医療機関も同じだと思っています。精いっぱいの対策をし、その姿を見ていただかないと安心して来ていただけないだろうと思っています。それでも感染のリスクはなくなりません。病院やクリニックには怖くて行けないという人に心配しすぎだと言っても納得してもらえるはずがありません。ですからそんな方にはオンライン診療をすることにし、実際運用しています。心配する人に心配するなということほど空しいことはないと思っています。黙って言うことを聞いておけという姿勢は通用しません。心配を解消する努力を医療機関も飲食店も求められているのだと思っています。不安を理解する気持ちを持たなくてはいけないと思っています。その結果でしょうか、鹿屋ハートセンターの受診患者さんはほとんど減少していません。ありがたいことだと思っています。

聴診器を当てる前に、聴診器をアルコール綿で拭きあげてから聴診するようにしています。その姿を見て「先生も大変ですね」という方もおられますが、いつも返事は同じです。お一人ずつ聴診器を拭きあげることなど、全然大変ではない、ハートセンターに行ったらコロナになったというほうが大変だからと言っています。なってから慌てるよりもならないように対策する方が簡単だからとお話ししています。

完璧な対策などあるはずがありません。しかし、元の病気に対する治療の中断による悪化を防ぐために定期的な受診は続けてほしいと願っています。そのためには安心して受診できるように努力し、努力する様子も実際に見ていただくのが良いだろうと考えています。新型コロナ禍が終息し、あの頃は大変だったねと患者さんと笑って言いあえるように対策を継続し、ともに乗り越えましょうと話し続けようと考えています。



Wednesday, August 12, 2020

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぎ、感染拡大による医療崩壊を起こさないための鹿屋市医師会の行動、介護施設との協同。そんな努力ができる鹿屋市が誇らしい。

 7月以後、PCR陽性や抗原陽性者の数が増え続けています。4-5月の緊急事態宣言を上回る増加です。重症者が少ないから状況はひっ迫していないという人もいますが、ひっ迫してからでは遅いと思っています。

鹿屋市医師会では相当な危機感をもって対策を打たねばと考え4月末から新型コロナ対策委員会を立ち上げました。私もメンバーの一員になりました。鹿屋市医師会が危機感を持った理由は、鹿屋市を含む大隅半島の医療供給能力が脆弱だからです。新型コロナ以前、感染症指定病床は鹿屋市に4床しかありませんでした。現在は、あと4床は受け入れようと決まり8床です。また、仮にもう少し、受け入れを増やしたとすると、通常の救急を含む診療体制が維持できないのではないかと危惧したのです。


大隅半島内には緊急の心臓手術ができる病院は1か所しかありません。1か所で整形外科や脳外科もあり多発外傷に対応できる病院もありません。大隅では不十分な診療体制を複数の医療機関が協力し補完しあってなんとか救急に対応できる体制を維持してきました。何でもできる病院がない状況で施設の垣根を越えて協力し合う仕組みを鹿屋方式と呼んできました。その一つ一つが大切な役割を担っている施設で新型コロナ対応のために機能が低下してしまえば普段の救急診療にも支障が出ると危惧したのです。

新型コロナ委員会では、県や市が新型インフルエンザ特措法に基づく行動計画を作成する前に医師会の行動計画を作成しました。また、陽性者を早期に発見し感染を拡大させないために医師会で運営するPCRセンターも5月7日には開設しました。上段の図は、PPEなしでも検体採取できるように作成した検査用のボックスです。鹿屋市の理解を得て鹿屋市の予算で作成しました。移動可能であり、一度に大勢の検査が必要になった時にはその施設に持って行くことも可能です。

次に取り組んだテーマは介護施設での大規模クラスター発生を予防する、あるいは発生した時に医療機関がパンクしないための協力体制の構築です。6月から医師会と介護施設の団体との協議を重ねてきました。鹿屋市内の入所施設に入所する利用者は約3000名です。人口10万人の町ですから3%の方は入所者なのです。ここで大きなクラスターが発生すれば、たちまち医療崩壊です。下の図は、もうすぐ開催される入所施設向けのPPE着脱訓練と入所者に対するACP取得のための勉強会の告知です。介護施設への感染経路は、面会者・職員による持ち込み、入所者の施設外への受診時の持ち帰り、新規入所時くらいしかありません。その経路を断つ努力の意識付けを施設と医師会で共同で行いたいと考えています。また、実際に発生し、入院ベッドが確保できないような状況が生じても、それゆえに感染拡大させないための感染管理の勉強です。勉強はすべての入所施設が対象でオンラインで行いますが、大隅地区の感染症認定看護師が希望する施設には出向いてゾーニングのアドバイスをするよう計画しています。また、今の段階から発症した場合、入院を希望するのか住み慣れた施設での療養を希望するのか入所者や家族の意思を確認してゆきます。


崩壊が起きてから慌てるよりも、崩壊しないように準備しておく方が良いに決まっています。ひっ迫していない今だからこそすべきことだと考えています。そのためには医師会の努力だけでは足りません。市などの行政や、それまで関係が希薄であった介護施設との連携が不可欠です。そうした連携を模索できる今の鹿屋市の問題意識を素晴らしいと感じています。そんな積み重ねが、感染拡大や医療崩壊を防ぎ、市民の不安の解消に繋がれば言うことはありません。