Wednesday, March 25, 2015

ガイドライン作成に携わる先生が製薬メーカー主催の講演会の演者になることに違和感を感じます

ブログを長く書かないと、体調が悪いのかなどと言われます。ブログを書くのは久々ですが、体調が悪いわけではありません、ただ、ネットから少し距離を置くと楽なのでブログも書かず、Facebookにも反応せずにゆっくりとしていました。

 最近、医師向けの製薬会社主催の講演会が多数開催されます。その分野の権威からまとめてお話を伺えるので積極的に参加し、新しい知識の習得に努めています。しかしあまりにもこうした講演会が多いので食傷気味であるのも事実です。循環器分野で多いのは降圧剤のARB製剤の講演会、糖尿病のDPP4阻害剤、SGLT2阻害剤の講演会、心房細動に対する抗凝固剤であるNOACの講演会です。いずれも複数の製薬会社から製剤が発売されており、各社が覇を競うからでしょうか?

 循環器領域の最もよく開催される新規抗凝固薬NOACは現在4種類が発売されていますが、いずれの製剤でも演者の先生の顔ぶれはあまり変わりません。このため先週はAという製剤が良いと言われていた先生が、翌週にはBという製剤が良い等と講演されることもあり、現場では実際に何を使用したら良いのか講演を多く聞いたばかりに混乱するということもあり得ると思っています。

 こうした製薬メーカーの販売促進の片棒を担ぐために、データをねつ造するというような事件が発生したこともあり、各医学会では医学研究の利益相反(COI)に関する指針を作成し、学会員が経済的な見返りを受けて製薬メーカーに都合の良い発表を行ったりする行為を戒めています。

 図は日本循環器学会が作成した心房細動治療のガイドラインです。委員の名前が記載されています。このメンバーの名前を見ると新規抗凝固薬の講演会でよく拝見する方々です。学会が作成するガイドラインは医療訴訟の際に裁判官が判決を作成すために参考にする最も重要な資料の一つです。またガイドラインに基づいて多くのまじめな医師は日常診療を行うわけですからこうしたガイドラインがもし間違っていれば治療を受ける患者さんに実害も及びます。このように重要な意味を持つガイドラインですから、作成に携わる医師は製薬メーカーから経済的な見返りを受けているのだろうと思われるような行為を避けるべきだろうと思います。

ガイドライン作成に携わる医師が、その内容の説明するための講演会で話をされることは重要だと思います。しかしそうした講演会は当該製薬メーカーがスポンサーになっていては良くないだろうと考えます。学会の中で開催されるランチョンセミナーなども当該製薬メーカーがスポンサーになってガイドライン作成に携わった先生が講演されるのには違和感を禁じ得ません。製薬メーカーから経済的な見返りを受ける先生はガイドライン作成に携わるべきではないと思いますし、学会中に開催される講演会なども経済的に製薬メーカーから独立して開催されるべきだと思います。産学協同を否定するものではありませんが、協同というからにはお互いに経済的に依存しないというのが原則のはずだと思っています。

経済的に自立できない学会が企業にすり寄る様は決して美しいものとは思えません。