Wednesday, December 2, 2015

究極のDAPT回避法 PCIをしないあるいは薬剤溶出性ステント植込みをしないという選択

薬剤溶出性ステント植込み後の2剤の抗血小板療法(DAPT)の第3弾です。抗凝固療法を受けている心房細動患者の冠動脈疾患を見た時の究極のDAPT回避法を考えます。

答は簡単です。ステント植込みをしないという選択です。最上段の図の方には、矢印で示すように回旋枝の分枝に90%狭窄を認めます。潅流域もきわめて小さいという訳ではありません。初診時に労作時の胸痛もありました。胸痛があり潅流域もそれなりにあるという場合、心房細動合併でなければPCI,ステント植込みをしても何も問題ないと考えます。しかし、心房細動合併の場合、この狭窄を放置するリスクと3剤の抗血栓剤を内服して脳出血を起こすリスクはどちらを優先して考えるべきでしょうか?この狭窄を拡げるために命を懸けるほどでもないと判断しました。この方は内服で日常生活で胸痛を感じることもなくなりました。

このように、狭窄があるからあるいは胸痛のような症状があるからといって、すぐにPCIを選択するのではなく、PCIを選択することで派生するリスクを考慮してPCIの実施を決定すべきと考えます。

中段の方は左冠動脈主幹部が責任病変の不安定狭心症でした。プラークの破裂像もあり緊急で主幹部にステント植込みを行いましたが、3剤の抗血栓剤内服中に脳出血で亡くなられました。もし、バイパスを選択しておれば違った経過だったかもしれないと忘れられないケースです。

心房細動を合併する冠動脈疾患では、合併しない冠動脈疾患とは少し異なる適応でPCIを考えるべきだと思っています。カテーテル治療ができるからするのではなく、できるけれどもしないという選択が重要なケースが存在すると思っています。

下段の図は、EHRA practical guide 2015からの引用です。Elective PCIの場合、CABGやバルーン単独の治療も考慮しなさいと記載されています。私のPCIあるいはステント植込みをしないという選択もあるというのと同じコンセプトです。

また、この図の下には低用量のNOACも考慮しなさいとの記載もありますが、低用量のNOACとDAPTでは脳出血が少なく、ステント血栓症も少ないというエビデンスがあるわけではありません。一般にガイドラインはエビデンスに基づいて作成されますが、ヨーロッパでは循環器だけかもしれませんが、ガイドラインができてから裏付けるエビデンスを求めるという風に感じます。エビデンスが出るまで放置される患者を救うためにおそらく良いだろうと思われる戦略を先行させるという考え方にも一理あるとも思いますが、日本ではこのような方針を学会は提案できないだろうと感じます。

エビデンスに基づいてガイドラインを作成する日本循環器学会の心房細動ガイドラインにはDES植込み後の抗血栓療法をどうするかという記載は一切ありません。また、最終のガイドラインは2013年版です。毎年、更新されるヨーロッパとは熱心さが異なります。エビデンスがないから放置ということで良いのかと感じます。

No comments:

Post a Comment