Fig. 1 初診時心電図 |
Fig. 2 安定期心電図 |
冠動脈CTです。急性心筋梗塞だと思えばCT検査は時間をロスするだけですからCTを先行させるなどということは過去に考えたこともなかったのですが今回はCTを先行させました。Fig. 3がCT像です。高位側壁枝が閉塞していました。また図には示しませんがエコーで側壁はakinesisでした。
この状態を見ればもう様子を見るという選択はありません。引き続き冠動脈造影を行い、血栓像を伴う高位側壁枝にステント植込みを行いました。
CTという寄り道をしたためにDoor to balloon時間は2時間50分になりました。Peak CPKは3000を超えました。
Fig. 2は数日後に安定している状態で撮った心電図です。やはり前胸部誘導は少しSTが上昇しています。おそらく普段からこのような形の心電図なのだろうと思います。
Fig. 3 初診時CT |
Fig. 2の心電図と同日にみた心エコーでは壁運動異常は消失していました。CPKは上昇したものの壁運動異常のない状態で退院できましたから寄り道も許されるのではないかと思います。
Fig. 4 初回CAG |
診療報酬も「兵は拙速を尊ぶ」の考えが基本でDoor to Balloon時間が短ければより多くの報酬を医療機関は得ます。
この方の場合、急性冠症候群であったわけですから、「兵は拙速を尊ぶ」の考え方で良かったとも思いますが、結果として心筋壊死を最小にできた訳ですから十分に相手を知ったうえで対処する「彼を知り己を知れば百戦危からず」の戦略もありだったとも思います。
この先も診療する急性心筋梗塞に対してCTを先行させるなどということはまずないでしょうが、すべてがマニュアル通りに進み、何も考えないという形ではなく臨機応変もありだと今回のケースで考えました。
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