Wednesday, March 7, 2018

心房細動患者の予後を悪くさせる低腎機能に介入は可能か? 願い、努力すれば叶う?


2018年2月27日付当ブログ「通院を止めてしまう心房細動患者はどんな人たちなのか」で通院を止めるのは、無理解な人たちではなく通院が困難になる高齢者だと示しました。 この4年間追跡した方たちの予後を腎機能別に見たものが図1です。

クレアチニンクリアランスが50ml/min未満の方の死亡率は50以上の方の7倍も高値でした。この差は75歳未満の方の死亡率(1.1%/年)と75歳以上の方の死亡率(1.7%/年)の差以上の大きな差でした。よく言われるように心房細動患者さんの予後不良の因子として年齢もさることながら腎機能が大きな意味を持っていたのだと改めて感じます。

図1 クレアチニンクリアランス別の4年予後
図2は2年間のクレアチニンクリアランスの変化です。75歳未満の方のクレアチニンクリアランスの2年間での低下率が7.8%であったのに対して75歳以上のそれは、元々低いクレアチニンクリアランスが更に15.5%も低下していました。2歳、年齢を重ねた上に平均でもクレアチニンクリアランスが50を下回って大きく低下しては予後が悪くなっても仕方ありません。

高齢になり腎機能がどんどん低下する心房細動患者の予後は悪くても仕方がないと諦めるしかないでしょうか?
図2 2年間でのクレアチニンクリアランスの低下

2年後のこのデータを見て何かできることはないのかと考えてきました。年齢を逆戻りさせることはできないので腎機能の低下を何とか抑えられないだろうかと2年後のデータを見てから考えてきました。

図3 4年間でのクレアチニンクリアランスの低下
腎機能が低下する一つの要因は心不全の存在で利尿剤の使用です。ですからなるべく利尿剤を使わない心不全のコントロールを意識してきました。また、消炎鎮痛剤など腎機能に悪影響する薬剤をなるべく使用しないようにしてきました。また、2年間の当院のデータでは降圧剤を使用している方で低下率が小さかったこともあり降圧治療も厳密に努めてきました。

図3は4年間の変化です。4年間のデータがそろっている方の変化ですから2年のデータよりもnは少なくなっています。この方たちで75歳以上の方の変化を見ると2年間で16.0%低下したクレアチニンクリアランスはその後2年での低下率は6.8%でした。生き延びている、ドロップアウトしていないということが低下率を小さくした要因かもしれませんが、腎機能を低下させないぞという意思が腎機能の低下率を小さくしたと思いたいものです。

願い、努力すれば叶うと信じて心房細動患者の腎臓を守ってゆきたいと思います。


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