ただこのチェックは結構大変でした。余っている薬があればすべて持ってきてくださいと言ってもなかなか持ってきてくれないのです。残っている薬を持って来たらどうして飲んでいないのだと叱られると思ったのでしょうか?絶対に怒らないからと何度も話をして少しずつ持ってきてくれるようになりました。
図2は冠攣縮性狭心症の方が持ってきてくれた残薬です。飲み残しはありませんと言っていた方です。冠攣縮性狭心症できちんと内服しなかったせいで亡くなった方を少なからず経験した私は、口を酸っぱくしてきちんと内服しないとどれほど怖いかを説明してきたつもりでした。しかし、この有様です。正しい診断をし、正しい治療方針を立て、内服の必要性を説明してきたつもりですが不十分でした。内服していない患者さんの行動を理解できていなかったのです。残薬のチェックをするようになって本当に良かったと思います。長く通院していて分かったつもりになっていた患者さんのことを理解できていなかったと知ったからです。
図3はまだ100人余りの方の集計ですが、1日1回の薬も2回でも3回でも全処方剤数に対する飲み忘れ率は同様に15%を超えていました。1日当たりの率というのは分かりにくいと思いますが、100日に1度の飲み忘れだと1日1回の処方では飲み忘れ剤数は1%、1日2回では0.5%になってししまい、同じ1回の飲み忘れでも分母が剤数だと1Xよりも2X、3Xの方が飲み忘れが少ないというような誤解をしてしまうので分母を剤数ではなく日数にした数字です。やはり2X、3Xの薬の内服完遂率は低くなります。また予想していなかったことですが、テープ剤の貼り忘れは群を抜いて高率でした。
机やパソコン・書籍に向かって勉強をし、エビデンスを知っていても、患者さんの行動を知らなければ求める成果をあげることはできません。改めて医師の仕事は診察室にあり、患者さんとの日々のやり取りでしか仕事の果実を得られはしないと思えます。
残薬を知ることで患者さんとの新たな物語が始まる予感です。
机やパソコン・書籍に向かって勉強をし、エビデンスを知っていても、患者さんの行動を知らなければ求める成果をあげることはできません。改めて医師の仕事は診察室にあり、患者さんとの日々のやり取りでしか仕事の果実を得られはしないと思えます。
残薬を知ることで患者さんとの新たな物語が始まる予感です。
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