炎上覚悟で書いています。
100m競走で勝ち負けを決めるとしたら、用意ドンが公平です。しかし、65歳の人と85歳の人との競争でも一度に用意ドンで一緒にスタートしてもらうことは公平でしょうか?
こんなことを〇月〇日×時からコロナワクチンの接種予約を始めるので早い者勝ちですよ、これが公平性を担保しているのだという話を聞いて考えました。65歳の人と85歳の人でチャンスは同等でしょうか?私にはそう思えません。ましてインターネットでも予約が取れますよという仕組みであれば、圧倒的に若い人が有利です。1時間も2時間も電話したけれど予約をとれなかっただとか、予約を求める人が殺到してクリニックの前で警察官が出動する騒ぎになったなどと聞くと早い者勝ちで用意ドンという仕組みが公平でよい仕組みだとはとても思えません。
そこで鹿屋ハートセンターでは1月ほど前から、ハートセンターで接種を受けたいかという意向を調べ、希望される方の名簿を作り始めました。最近一部で批判されているフライング、仮予約と同等の仕組みです。かかりつけの方が受診されたときに希望を聞いているので、かかりつけの方が優先になります。平等ではないと言われるかもしれませんが私は、心臓病という基礎疾患を持ち、コロナに罹患した時に重症化するリスクの高い人を優先することを悪いとは思いません。ほぼ1月が経過し、かかりつけの方の意向を聞き終わったので、ホームページにも65歳以上の方なら誰でも申し込みができますよと明らかにしました。
2021年5月14日時点で約1200名の接種希望がありますが、これも早いもの順には接種はしないでおこうと思っています。鹿屋ハートセンターには片道50㎞の距離を通ってくる方もおられます。通常の診療とは別に3週間の間に2回来るようにというのはあまりにも酷だと思うので1回は診察日に合わせてあげたいと思っています。逆に数分で来ることができる方には急にキャンセルが出た時の備えとしての役割をお願いしています。場合によっては接種は早くなり、場合によっては遅くなります。これも、私には何でも用意ドンで早い者勝ちというのが正しい価値観とは思えないからです。
午前の外来中に、時に急性心筋梗塞の方が来られます。一刻を争う事態です。朝1番に来られた方にも事情をお話しし、救急の治療が終わるまで待っていただいています。過去に、自分が先だろうと文句を言われた方を見たことがありません。病状や状況に合わせて、お先にどうぞという考えが中心の社会が私は住みやすいと思いますし、結果、先を譲る人も自分が優先してもらいたいときに必要なチャンスを得られます。用意ドンで一斉のスタートで早い者勝ちと主張する人もそんな世界では生きづらいのではないかと思えてなりません。
用意ドンで早い者勝ちを公平とする価値観よりも、あなたの方が大変なのだからお先にどうぞという価値観の社会を私は好ましいと考えます。いつから、お年寄りを押しのけでも早い者勝ちだろうという価値観を公平という社会になってしまったのだろうと悲しくなります。
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