Fig. 1 Net clinical benefit of Warfarin |
Fig. 2 Incidence of Thromboembolism |
Fig. 3 Incidence of major hemorrage |
INRが高くなるにつれてワーファリンを内服していない方と比べて塞栓症は減少していきますが大出血の頻度は増加していきます。しかし、INRが2.99まではワーファリンを内服していない群と比べて総死亡は減少しています。INRが3を超えると総死亡も増加するのでこんなにワーファリンを効かせるくらいなら内服しない方がましだと言えます。ただ2.99まではワーファリンは内服しない群と比べて役に立っているのです。NOACのない時代に一生懸命にワーファリンのコントロールに励んできたことは間違いでなかったと言えます。また、INR1.6未満では逆に塞栓症を増やすとよく言われていますが、このグラフを見ると1.6未満でも塞栓症も総死亡も減らしていることに驚きました。
ではNOAC出現後、NOACと比較してワーファリンはやはり劣るのかという点を各RCTの結果とJ-RHYTHM registryの結果を並べてグラフにしてみました。やはりJ-RHYTHMの結果はCHADS2が同等の70歳以上のデータを使用しました。同じ土俵のガチンコ勝負ではないのでこの比較は意味がないかもしれません。しかし、J-RHYTHMの方は70歳以上のデータですし、約25%の方が抗血小板剤を内服されていたとのことですので各NOACのRCTよりも条件が悪いかもしれません。
Fig.2が塞栓症の頻度ですが、各NOACのNOACとワーファリンの比較ではもちろんNOACの方が塞栓症の発生は減少しています。しかし、J-RHYTHMのワーファリンのデータと比較するとRe-lyの高容量やARISTOTLEのNOACはJ-RHYTHMよりも塞栓症の発生は少ないのですがROCHET-AFではJ-RHYTHMよりも塞栓の発生頻度は高いということが分かります。また、ROCHET AFでのワーファリン投与群の塞栓症発症率の高さは他のNOACのRTCと比較してもなぜか際立っており、これと比較してNOACが良いと言われてもなぁ等とも思います。
Fig. 3は大出血の頻度ですが並べてみるとINR1.6-1.99までのJ-RHYTHMと比べて大出血の頻度が少ないNOACはありません。Apixabanの結果がほぼ同等というところでしょうか?IN2.0-2.59のJ-RHYTHMでは大出血の頻度は増加しますがそれでも各NOACと同等です。やはりApixabanだけがJ-RHYTHMよりも優れた成績です。
繰り返しになりますがガチンコ勝負ではないのでこの比較は意味がないのかもしれません。しかし、このJ-RHYTHMの結果は、日常の当院の診療の実態と近くしっくりと来るのです。メーカー主導で組み立てられるRCTの結果だけではなく、日常診療の実態や、他のデータも見ながら患者さんにとっての最善を考えるのが医師の務めだと思います。上司もいないのでデータをまとめろと言われることもありませんが、面倒がらずに各試験を比較するグラフを作ってみて良かったと思います。考えさせられました。しかし、こうしてみるとApixaban(エリキュース)の成績の良さが際立ちます。長期処方が可能になるのはまだ先ですが、期待は膨らみます。
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