日本にはPCIを実施できる施設は1000施設以上あります。このように数が多いことには当然のようにメリットデメリットがあります。数が多いことで施設当たりの症例数が少なくなり、スキルが高まらないという批判もあります。確かなデータはないものの実施件数の多い方が成績が良いという考えもあります。
一方で実施可能施設が多いことで日本の津々浦々でカテーテル治療が受けられるというメリットもあります。急性心筋梗塞症などに対する一刻を争う治療であれば多く施設が存在することは循環器救急患者さんにとっては貴重です。
私個人の考えですが、都市部に症例数の少ない施設は不要で、交通の便が悪く時間的に容易に治療が受けられない土地では小規模施設も必要だと思っています。
2006年、鹿屋ハートセンターは交通の便の悪い地方の小規模施設として誕生しました。このような小規模のカテーテル治療実施施設は、当然ですが鹿屋ハートセンターが初めてではありません。既に成功した事例があり、その多くは抱える人口も多い土地に存在しましたが、そのような小規模施設での成功の例があり、そうした例に勇気づけられて地方における可能性を求めて鹿屋ハートセンターの企画を考えました。
正直、不安でした。過去の例の多くは新幹線の沿線であったり、県庁所在地に存在する施設であったからです。鹿屋ハートセンターの企画段階でその不安から、当時最も成功をおさめていた愛知県のTハートセンターに見学に行きました。そこでカテクリニックを作るなら、群馬県のTクリニックに行って勉強してこいと、TハートセンターのS先生から紹介して頂いたのがTクリニックのT先生です。写真の先生です。開業前にT先生から頂いた刺激は貴重でした。
この先生が9/5に鹿児島に講演に来てくださいました。鹿屋ハートセンター開業前に教えを乞うたきりでしたので9年ぶりの再会です。楽しい時間を過ごすことができました。
T先生の御開業後、愛知県のS先生も滋賀県のT先生も、比較的後には北海道のF先生もご自身の開業前にこのT先生のところに勉強に行かれています。T先生の指導を受けた全国の施設で実施されるPCIは年間に1万件を超えるだろうと想像しています。
是非はともかく、国内のどこでもPCIが受けられるという世界に例を見ない日本型のPCIの普及に果たしたT先生の貢献は偉大だなと考えながら御講演を拝聴しました。
どれだけペーパーを書いたか、どれだけ新しい治療コンセプトを提案してきたかだけではなくこのような地域医療に対する貢献を評価する学会の姿勢はないものだろうか等とも考えました。
しかし、冷静に考えればそのような貢献をする先生が、学会に誉めてもらいたいと考える筈もありません。学会の姿勢を問うよりも、私個人として感謝の気持ちを忘れないように再度、心に刻んでおきましょう。
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