鹿屋ハートセンターに通院している方の残薬率は、分1の薬も分2、分3の薬も15%を超えていました。鹿屋ハートセンターに通院している方はいい加減なんでしょうか?図1は、イグザレルトの市販後調査であるXapass studyにおける脱落率です。
Xapassの年率12.1%の脱落に対して、鹿屋ハートセンターのそれは、死亡を含めて年率3.6%であり、真面目に通院するという点では当院の患者さんはXapassの患者さんよりも熱心だと言えます。
一方、図3に示したXapassの内服完遂率は、93.06%と当院の患者さんの完遂率を大きく上回ります。35日処方で1日飲み忘れるとおよそ3%の飲み忘れですから35日で2回のみ忘れる平均ということになります。脱落は少なくないのにきちんと内服しているということに疑問を感じた私はメーカーにどのように残薬をチェックしたのかを質問しました。答えは、患者さんにちゃんと内服しているとたずね、「ハイ」と言われた方は残薬なしとカウントしたということでした。
前回の記事に書いたように、きちんと内服していない方も、ちゃんと内服しているのかとたずねればほとんどの方がハイと返事されます。質問しただけで得られる残薬率には信憑性がないと私は思います。
当院の15%超の残薬率がもし一般的なものであればどのような意味があるのでしょうか?ちゃんと内服していないために脳塞栓症が増えるだけではありません。
平成28年度の薬局で調剤された薬剤料は5兆3千億円でした。循環器用薬に限ってもおよそ1兆円でした。15%が内服されずに無駄になったとすると全薬剤で約7500億円、循環器用薬だけでも1500億円が無駄になっている計算です。残薬の管理ができていないことで生じる日本の医療費の無駄使いは小さくない意味を持っていると感じます。厚生労働省の統計では年間500億円が無駄になっているとされていますが、残薬が1%のみだという統計はとても信じられるものではありません。厚労省はどのように残薬をカウントしたのでしょうか?
福岡で熱心に取り組まれ、鹿児島や東京にもこの残薬バッグは普及しつつあります。薬剤師会が中心です。当初、私は、薬局でのチェックの内容を聞くだけでしたが、なにかこの方法だけでは残薬が減らないと感じていました。今は、薬局にカウントしてもらうために私自身が残薬を見せてもらい、どうしてこんなに残ったのだろうと患者さんと話をするようにしました。多くの方は、なぜだか分からないと言われます。一方で、理由を明確に述べられる方の中には抗凝固剤を内服して血圧が下がりすぎたからとか体重が減ったから、便秘をするようになったからという方もおられます。そんな理由で無断で脳塞栓症を減少させる薬を自分の判断でやめていることを非常に危険だと感じます。
残る薬を介して患者さんの考えていることを知ることができ、患者さんとの距離が縮んだと感じます。薬剤師会に任せるのみだけではなく、診察室の医師も積極的に残薬に目を向けることをお勧めしたいと思っています。
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