2015年9月13日日曜日

劇場と呼ばれる医療の現場

のめりこみやすい性格だなと自分で感じます。「演劇と医療」の第3弾です。

スマトラ沖地震の救援でタイ、インドネシア、スリランカを訪れました。どの国の病院でも手術室は "Operating Theatre" と呼ばれていました。RoomではなくTheatreです。その時にはそんな風に言うのかくらいの関心でしたが、「演劇と医療」を考え始めると何故Theatreと呼ばれるのか気になってきました。英語の語源辞書などを見てもギリシャ演劇の劇場がその発端のようでRoomというような意味は見当たりません。

上段の図はギリシャ演劇の劇場です。階段状の客席と舞台を併せてTheatreと呼んだそうです。現代の手術室のイメージとはかけ離れています。この劇場を見ていて学生時代の階段教室を思い出しました。語源辞典にも階段教室をTheatreと表現することがあると記載されています。

2番目の図は、昔の教育的な手術の現場の図です。教育のために階段教室の下で手術を実際に行っていたのです。きっとこれがTheatreと呼ばれる所以であろうと思います。

更に思い出します。下段の図は、PCIの創始者であるGruentzig先生が初めて開催されたライブデモンストレーション会場の写真です。まさにTheatreです。現在では日本中、世界中でライブデモンストレーションが開催され、カテーテル治療の普及や技術の向上に寄与していますが、ギリシャ演劇からの延長にあったのかと驚きました。

Gruentzig先生のこの舞台がなければPCIの普及はきっと大きく遅れたことでしょう。この劇場にいた、私たちの世界では知らない人がいないJudkins先生・Sones先生・Dotter先生もも心を震わせたはずです。

新しい発見や新しい治療法の創始もそれが知らしめられなければなかったことも同じです。舞台に立ち、観衆の心を震わせ、共感することで現実の世界の発展が起きます。研究者や開発者もGruentzig先生がそうであったようにTheatreに立つ必要があるように感じます。演劇の歴史と医学の発展は無関係ではなかったのです。

こうしたOperating Theatreの伝統は主に医師同士の教育や交流の場です。しかしながら医療の舞台の主役はきっと患者さんです。患者の存在が抜け落ちたTheatreであり続けて良いのでしょうか?最近では手術室の様子を患者家族控室に放映する病院も出現しています。鹿屋ハートセンターもそうです。

ギリシャ演劇の伝統を引き継ぐ医師のTheatreが患者さんも参加するTheatreに昇華するにはどのような概念の創出が必要なのでしょうか。考えれば考えるほど興味が尽きないテーマです。

上段の図はWikipediaの下記からの引用です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E4%BB%A3%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%BC%94%E5%8A%87

中段の図は下記末廣医院のWeb siteからの引用です。
http://www.suehiro-iin.com/arekore/history/21.html


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