2011年6月5日日曜日

スタチン投与下でも発症する急性冠症候群 (2) Beyond STATIN

昨日(2011.06..04)は、たまには勉強に行かなくてはと考えATIS (AtheroThrombosIS) の講演会に出るために熊本に行ってきました。鹿屋ハートセンターには留守番の先生を頼みました。普段は、週に2回、手伝いに来てくれる鹿大のK先生との会話が同じ循環器医同士の唯一のディスカッションの場です。一人でものを考えたり、狭い世界でものを考えていると思わぬ陥穽に嵌まりがちです。私にとっては貴重な機会ですから、出しゃばりを承知で、他の参加者の先生には迷惑だろうと思いながら2011年6月3日付当ブログ「スタチンによる十分な脂質管理下でも発症する急性冠症候群」のケースにつき意見をうかがいました。

座長の熊本大学 小川久雄教授が、LDLをスタチンで低下させても発症する急性冠症候群の病態に迫り、スタチンによる介入を超える beyond statin あるいはLDLに対する介入を超える beyond LDLの国際的な共同研究に熊本大学が参加していること、LDL低値でも発症するACSに係る因子として中性脂肪が大事なのではないかと教えてもらいました。早速、6/3のケースの中性脂肪をチェックしてみると、48mg/dlです。低値なのです。この方のHbA1Cは6.5程度ですが、食後高血糖でもあるのでしょうか。今後、こうしたケースでは食後高血糖も注意して見ていこうと思います。

もう古い論文になりましたが、スタチンによるコレステロールの低下が、冠動脈疾患患者の総死亡率を低下させるかという二次予防のRCTがありました。 4S studyです。

Scandinavian simvastatin survival study group: Randomised trial of cholesterol lowering in 4444 patients with coronary heart disease; the Scandinavian simvastatin survival study (4S).Lancet. 1994; 344: 1383-9

このsimvaastatinを投与した2221例とプラセボを投与した2223例の比較で、5.4年後にはsimvastatin投与群で182例 (8%) の総死亡、プラセボ群で256例 (12%) の総死亡と、総死亡率を30%減少させることが示されました。このランドマークとなるRCT後、冠動脈疾患を見る循環器医にとってstatin投与は常識になりました。しかし、statin投与は常識になったものの、statinによる介入下でも発症する急性冠症候群に対してどう介入するかという議論は十分に尽くされていなかったように思います。4S studyでは8%の死亡です。また4S studyの10年後の結果は、simvastatin 投与群で238例の冠動脈疾患死、プラセボ群で300例の冠動脈疾患死です。

Mortality and incidence of cancer during 10-year follow-up of the Scandinavian Simvastatin Survival Study (4S). Lancet 2004;364:771-7.

 

statin投与で満足せずに、他の介入も考えなくてはいけないとの趣旨で6/3付のブログを書きましたが、同じような問題意識で考えている先生方がいることを知り、もっと考えていかなくてはいけないと再認識です。スタチンの投与下でも発症したACSに対して、best practice 下の発症と諦めないようにしなければなりません。

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