10年以上前に、低左室駆出率で診るようになった患者さんです。初診時の左室駆出率は37%でした。現在の左室駆出率はカルベジロールの内服を続けた結果、70%です。カルベジロール開始前から2:1房室ブロックがあり左胸にDDDペースメーカーを植え込んでいます。
植込み後3年を経て心室ペーシングが頼りなくなり、心室リードの断線と判断しました。上の図の矢印部分がリード断線部位です。このため右胸に新たにDDDペースメーカー植込みを行いました。過去にこのようなケースがあった場合には、新たな植込み手術時に古いペースメーカーはとり出していました。しかし、この時は、何を思ったか、ペースメーカーをオフにするだけで良いだろうと考えたのです。
その後、7年以上を経過し、ペースメーカーチェックも順調でした。ところが時々、ドキドキすると言われるようになりました。それで実施したホルター心電図が下の図です。下段の記録では順調に心房心室ペーシングがなされていますが、上段の記録では新しいペースメーカーの作動とは関係なく、ペーシングスパイクが出ており、T波の上のスパイクも時にキャプチャーされて、いわゆるSpike on Tの状態になっています。危険なペースメーカーによる誤作動です。当初、何が起きているか分かりませんでしたが、メーカーに問い合わせたところ、ペースメーカーをオフにしていても、電池寿命が近づくと、ペースメーカーはオンになりバックアップモードで心室ペーシングを開始する設計になっているというのです。
知らなかった私のミスです。古いペースメーカーを取り出さずにオフにするだけにしていた私が招いた危機でした。新しい側の電池寿命も近づいていたために右側の電池交換を行い、古い左のペースメーカーは取り出しました。メーカーに聞いたところ、新しい機種ではオフにしてあるペースメーカーが勝手にオンになることはないとのことでしたから、この現象はいつか消えてなくなります。ただ、このような例が他にあってはいけないと考え、患者さんの了解を得て私の失敗を公開することにしました。
失敗してしまったことに目をつむったり、隠したりしていると成長はありません。また、失敗を共有することで同じ失敗をする医師が少なくなればと思います。
失敗をした私が言うのも変ですが、誰にも失敗はあります。こんなことを考えていて思い出した言葉がタイトルの「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」です。
新型コロナの流行による経済の危機に、条件を付けて各世帯30万円を給付するという方針が閣議決定されたにもかかわらず、一律に10万円を給付すると方針が変わりました。これに対して一律10万円の支給を主張していた野党からも「朝令暮改」だと批判の声が上がっています。どちらが正しい方針かは分かりませんが、一度決めた方針だから決して変更はしないというよりも、よりよい方針があるのなら改めるという方が良いのではないかと思います。
野党の皆さんは「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」という言葉を知らないのかもしれません。
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