2021年11月28日日曜日

鹿屋ハートセンターが新型コロナワクチン接種前に血圧測定をするわけ。3回目の接種でも安全な接種のため血圧のチェックはした方が良いと考えています。

 

 鹿屋ハートセンターでは、新型コロナワクチン接種に際して、接種前の血圧測定を実施してきました。下の図の方は、60歳代の方ですが、検診を一度も受けたことがなく何も内服していなかった方です。接種前の血圧が254mmHgです。驚きました。こんな方はいつ脳内出血を起こして亡くなられても不思議ではありません。ワクチン接種は見合わせ、高血圧のコントロールがついてからの接種としました。今では血圧も正常となり、ワクチン接種も無事に終えることができました。

このような方は例外でしょうか?上の図は、高血圧学会が公開しているガイドライン中の図です。推計ですが、全国に未治療の高血圧の人が1850万人です。ワクチン接種対象の12歳以上人口が1億1000万人として17%が高血圧の人です。およそ6人に1人です。下の図のような極端な人はもっと少ないでしょうが、突然死のリスクを抱えた人が少なからずワクチン接種に来ていることを忘れてはいけないと思っています。

2021年11月の時点で、ワクチン接種後に亡くなられた方は約1300人です。そのうち、高血圧と関連が深い心臓由来の死亡が389名、脳出血や脳梗塞などの脳神経系の死亡が180名、大動脈解離が61名です。計620人です。およそ亡くなられた方の半数は高血圧と関連した死亡です。

こんな風に考えるとワクチン接種前に血圧測定をしてハイリスクな方ではワクチン接種を見合わせ、高血圧の治療を先行し安定後にワクチン接種をした方が安全だろうと私は考えたのです。未治療の高血圧があることを見つけ、そこに介入することでワクチン接種後の死亡を減らせるのではないかと考えたのです。当院にワクチン接種のために初めて訪れられた約1200名の方のうち100名ほどが初回接種で高血圧であり、3週間後の2回目接種まで、家庭での血圧測定をお願いしました。結果、半数の50名ほどの方は家庭血圧も高値であったために治療を開始しました。

コロナワクチン接種が始まる前に鹿屋医師会の中でも議論がありました。血圧測定をするという医療機関としないという医療機関の間での議論です。しないという医療機関の先生のお一人は感染症の専門医に質問したら不要だと言われたのでしないというお話でした。感染症の専門医の先生はこれほど多くの未治療の高血圧の方がおられることをきっと知らないと思います。なので、ワクチン接種の安全な実施のために意見を聞くべきは循環器医なのだと思っています。

3回目のワクチン接種が間もなく始まります。より安全なワクチン接種のために医療機関で行われる接種では各医療機関で血圧測定をされることをお勧めします。できれば、集団接種もですが、難しいかもしれません。ならば、接種を受けられる方が自身を守るために家庭血圧の記録を接種会場に持参されるようにお勧めします。

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