Wednesday, February 9, 2011

MDCTでリスクを評価し、戦略を決定したSVGに対するstent植込み

Fig. 1 SVG stenosis at anastomosis revealed by Coronary CT
昨日のケースです。 17年前にCABGを受けておられます。LITA-LAD、SVG-D1、SVG-CXです。SVG-CXは閉塞していますがLITA-LADはpatentです。昨年末から歩行時の胸痛がありましたが、1月になり排便だけでも胸痛が出現するために入院となりました。以前から変性したSVGのD1吻合部が気になっていました。変性したSVGの中を通って拡張に行くのはhigh riskです。D1だけですから詰まってもよ良いのではないかとも考えましたが、閉塞したCxへのcollateral のfeederにもなっています。この方のLVEFは46%ですから、D1領域、Cx領域の梗塞を起こすとダメージは少なくありません。軽労作での胸痛の存在も考えれば、詰まってくれたら良いのにとも言えません。リスクを承知で血行再建を考えなくてはいけません。

Fig. 2 Before P
この方のPCIは当初 2/7を予定していましたが、リスクを考えると不安が募り、1日 日程を遅らせて2/7にCTを撮影、2/8のPCIとしました。

    Fig. 1のCT像では、SVG内はsoft plaqueだらけです。しかし、狭窄部はD1に入ってからですし、ステントのproxymal edgeがSVGにかかってもごく一部です。この所見なら相当な安全性でPCI可能と考え、自信を持ってPCIに臨みました。


Fig. 3 After PROMUS stenting

バルーンが狭窄部にあるだけで、拡張したSVG内に造影剤はプーリングします。さっと前拡張し、PROMUSを置いて終了です。Fig. 3に示すようにきれいな拡張がdistal emboliなしにできました。議論はあるでしょうが、IVUSはあえて使用しませんでした。plaqueの性状を見ている間の虚血や血栓形成の可能性を考えれば、余計な手間や時間をかけずにさっとPCIを終了するのが良いと考えてのことです。ガイディングカテをエンゲージさせてから、抜くまでFig. 4のカテ記録のようにおよそ10分の手技です。

PCIの翌日である、今日、患者さんは試しに階段を昇り降りされたそうです。胸痛なく昇り降りできたと喜んでおられました。

    PCI 前にメルビンを内服されていたので造影に備えて中止し、4日間のヘパリン化を先行しました。その上でMDCT で病変の性状を評価した後のPCI です。リスクをたくさん説明したのにこんな短い時間で終わったのですかと奥さんが拍子抜けされていました。短い手技時間と、成功はその前の評価が勝ち取ったものですから、10分で終了という訳ではありません。その前に時間をかけたからだよと言いたい気持ちは自分の胸に仕舞いました。


Fig 4. Medical record during PC

こうしたケースに大病院が向かい合う時にはどう対処されるのでしょうか。 大病院のほとんどがDPC病院になりました。DPCの病院では、このような周到な準備は経済的に評価されません。どのような治療、疾患にもvariance が存在するのに準備が周到であればあるほど病院の経済的な負担が増してしまうというのはいかがなものかと考えてしまいます。




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