2011年3月26日土曜日

震災関連死を減らすために循環器医ができること

Fig.1 PCI available Hospital MAP
日本は北は稚内から南は石垣島、宮古島までPCIが可能な国です。このように隅々までPCIが可能な施設がある国は世界中で日本以外に思いつきません。このため、1施設当たりの症例数が少なくスキルアップが困難なために集約化すべきだとの議論があります。しかし、一方でどの地域に住んでいても、急性心筋梗塞になった時に治療が受けられるというメリットもあります。私は、症例数が多い病院が少なく存在するよりも、症例数が少なくてもどこでも治療を受けることができるというのが日本の医療のよいところだと思っています。

私がかつて関わった対馬のいづはら病院のPCI症例数は100件程度ですが、対馬の心筋梗塞の100%を引き受けています。石垣島でも宮古島でも同様でしょう。一方、国内のベスト3の千葉西病院や小倉記念病院、新東京病院がその地域の100%の心筋梗塞を引き受けているわけではありません。都市部にある症例数の多い大病院には代替があり、症例数の少ない地方の病院には代替がないのです。ですから、症例数が少なくてもそこにある意義は極めて大きいと言えます。

震災関連死の原因疾患として心不全と心筋梗塞が多いことを3/24付のブログで書きました。この震災関連死に対する対策として避難所を遠隔地に設定する広域避難(3/17付ブログ)が有効ではないかと考えていました。しかし、福島第一原発の半径30km以内に住む方にも自主避難(勝手に逃げなさい)という政府では震災関連死対策として広域避難などできるはずがありません。では、震災関連死を黙って受け入れなければならないのでしょうか。

Fig.1は私が東北地方の地図にPCIができる施設をプロットしたものです。プロットした以外にもPCIができる施設はまだあります。全国にベスト10に入る仙台厚生病院もあれば年間数十件の施設もあります。「症例数の多い良い病院」も重要ですし、症例数が少なくてもそこにPCI可能な施設が存在することも重要です。八戸から久慈までは心配ないでしょう。久慈から県立大船渡までは少し心配ですが、盛岡までヘリ搬送すれば対処可能と思われます。気仙沼、石巻にもPCI可能施設があります。仙台は心配ないでしょう。福島県は心配ですがやはり福島市内へのヘリ搬送が現実的な対処と思われます。ただ、福島医大が目一杯であれば医大に対する支援も必要かもしれません。茨城県内も海岸線近くにPCI可能施設が存在します。

日本循環器学会の呼びかけで震災に関連して発症する循環器救急の受け入れを全国の病院が表明しました。しかし、一刻も早いPCIが必要な急性心筋梗塞患者を鹿児島に連れてくるなどということは現実的ではありません。震災関連死を減少させるにはこの地図にプロットした病院の機能が維持され、場合によっては高まるように学会を挙げてこの病院群を支援することだと思います。学会にも提案してみたいと思います。

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