2011年3月24日木曜日

危機に際しての指揮系統の混乱あるいは欠如にもどかしい思いで一杯です


Fig. National Document about Hanshin-Awaji Earthquake

1995年1月17日、阪神淡路大震災が発生しました。1995年12月27日、それまでの死者数に震災関連死が加えられ、死者数はそれまでの5502人から6308人とされました。その差806人が震災関連死です。直接死の14.6%、全体の12.8%が震災関連死です。神戸新聞によれば関連死の約半数を占めたのが肺炎、心不全、心筋梗塞であったそうです。一方、津名郡医師会の統計によれば、震災の前年と震災後を比較すると、津名郡だけで心筋梗塞の発症は6名から28名、脳卒中では31名から58名に増加していたとのことです。このうち、公に関連死と認められたのは4名だけであったとのことです。ですから、この増加分が震災関連死であったと考えると、さらに震災死に占める関連死の割合は増えることになります。


Fig. 2 National Document about Wide Transportation

3/24現在、確認されている死者は9811名、不明者を合わせると27000名にもなります。阪神淡路と同様にこの数字の15%が関連死すると考えると確認された死者数だけで計算しても1472名、27000人で考えると4050名の関連死が想定されるということになります。津名郡と同様の現象が起きればこの数字はもっと大きくなります。

今回の震災で発生するかもしれない関連死は私の計算ですが、阪神淡路の直接死と関連死の数、津名郡医師会の話のソースは、Fig. 1です。内閣府の教訓情報資料集の中で見つけました。内閣府の中に政策統括官(防災担当)が置かれ、担当大臣は松本龍内閣府特命担当大臣(防災)です。また、Fig. 2も内閣府のweb siteで見つけた広域医療搬送の概念図です。防災を担当する内閣府には、阪神淡路大震災を教訓にして、次の対策に結びつけなければという問題意識はあったようです。また、この問題意識から広域医療搬送の概念も確立しており、実際に広域搬送の訓練まで実施されていました。

では、何故、教訓にしなければならないという問題意識があり、実際に訓練まで実施されているのに、最大で数千人の関連死が発生するかもしれない状況で、実際の行動に移れないのでしょうか。やはり指揮官の問題でしょうか?

3/17付の当ブログ 広域避難をに京都大学防災研究所のレポートについて書きましたが、これば文部科学省の科学研究費補助金を用いて実施された調査研究のレポートです。他国の災害や過去の災害から学んで今後に役立てようという国費を使った活動が複数の省庁で行われています。これは、ましな方で今の最大の問題の原子力行政はどうなっているでしょうか。内閣府に原子力委員会原子力安全員会が設置されています。文部科学省には放射線審議会がおかれています。経済産業省には原子力安全・保安院が置かれています。原子力行政を一元的に管理する形態になっていないことに唖然としました。

防災に関してはどうでしょうか。中央防災会議のメンバーは全閣僚と日赤社長、NHK会長、日銀総裁などオールスターです。「みんなの責任、無責任」との言葉がありますがこれではどの組織がイニシアチブを発揮して指揮するのかが分かりません。まして今回の震災発生から中央防災会議は開かれていませんから、何のために中央防災会議が存在するのかその意義も不明になりました。この中央防災会議に加えて、原子力災害対策本部、緊急災害対策本部、被災者生活支援特別対策本部、福島原子力発電所事故対策統合本部です。米国ではFEMAが一元的に指揮をとり、軍をも動かし、避難から医療、住宅再建まで担当し、各省庁をコントロールします。これと比較すると日本の行政の指揮系統はぐちゃぐちゃです。サッカーに例えましょう。攻撃担当の指揮官とディフェンス担当の指揮官とゴールキーパー担当の指揮官に加えて医療担当の指揮官がそれぞれに選手に指示を出したらどうなるでしょうか。チームとして仕事ができるはずがありません。指揮官は一人で、他の担当は助言やサポートをすることだけです。これでチームとして機能するのです。

こうした指揮系統の混乱が、現場にも自衛隊にも自治体にも混乱をもたらし、数千人の関連死がなすすべもなく発生するかもしれないと思うともどかしくて仕方がありません。あてにならない政府とは別に対策を考えなくてはなりません。

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