Fig. 1 From CVIT |
震災発生2日後の3/13日付のブログから言いたかったことをはっきりと言いたいと思います。被災地での活動にこだわるなということです。モノやヒトの流れは被災地に向かってだけではなく、被災地から非被災地への流れを考えるべきだという点です。
福島の避難所にいた、病院の入院患者である避難者の死亡が伝えられました。他の避難所でも高齢者の死亡が伝えられていますし、DMATの報告でも心筋梗塞の発症などが報告されています。こうした大規模災害時に、感染症だけではなく急性心筋梗塞や肺塞栓症などの重篤な病気の発病が増えることはよく知られています。先ほども述べましたが、電力の供給や医療機器のそろっていないところでは、普通の環境であれば助かる疾患であっても救命はできません。現地に避難所を設定してそこで巡回検診を行うことにもちろん意味はあると思いますが、災害関連死を減らすために充分なのでしょうか。インドネシアのバンダアチェやタイのカオラックに救援に行った私の僅かな経験では、被災地の設備の整っていないところでできることは本当に限られているのです。
2005年にニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナに際し、ニューオーリンズのスーパードームからヒューストンのアストロドームへの数万人にも及ぶ集団避難を米国は実施しました。その距離は直線で300-400kmにもなります。この経験に学ぼうと京都大学防災研究所が文部科学省から1160万円の補助を得て現地調査を行い、報告書を作成しています。ニューオーリンズが水没したのが8月30日、スーパードームからの避難完了は9月3日です。3/13のブログ 歴史に学ぶで、スリランカでは重症患者はヘリ搬送されたことを書きました。同様にインドネシアでも、バンダアチェで治療できない患者はメダンやジャカルタに搬送されました。電力や食料、水でさえも十分ではない現地の避難所での救援には限界があるのではないでしょうか。強く表現すれば、現地での救援しか思いつかない政府の無策が避難所での災害関連死を発生させていると言うことすらできると思っています。
原発事故の対策としての避難勧告を受けて、栃木県や茨城県での受け入れが始まっています。また、私の暮らす九州でも大分県や福岡県が被災者の受け入れを表明しています。域外の受け入れ表明は自治体にとどまりません。透析医会では被災者の透析の受け入れを表明して受け入れ可能な全国の施設を公表しています。また、産婦人科学会も被災者の出産の受け入れを表明しています。受け皿はあっても、域外への移動にはそのマネージメントや移動手段の確保が必要です。国民保護法に基づき、広域の避難は法律上も可能と聞いています。また、この法律に基づく訓練はどの自治体でも実施済みです。より暖かく、電力も安定して食料や飲料水も安定している地域への広域の避難を今こそ決断すべきだと思います。そうすればそこで発生する重篤な疾患の治療もその土地で当たり前に実施可能となります。広域の避難の決定は各自治体ではできません。福島の原子力発電所の状況によっては数十万人にも及ぶ域外への避難になるかもしれません。政府の速やかな決断が必要です。
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