Sunday, July 22, 2012

特定疾患治療意見書を書いていて感じる疑問、問題点

特定疾患治療意見書
毎年、7月になると特定疾患治療意見書を書かねばなりません。循環器分野では特発性拡張型(うっ血性)心筋症や大動脈炎症候群の方が対象になります。こうした申請をすることで、この特定疾患をお持ちの方には医療給付が発生しますから、長期にわたる医療費負担が軽減されます。書くのが面倒でも、この病気のために経済的にも困ることの多い患者さんのために書かなくてはなりません。

図は、更新のために毎年書く書類です。黄色く色づけした一番上の部分、出生都道府県を記載しなければなりません。新規に申請した時に出生都道府県を記載しているのに毎年、更新書類にも出生都道府県の記載を求める理由は何なのでしょう?鹿児島県で生まれた方が翌年には宮崎県で出生したと変わるはずのない情報を毎年書かせる理由が分かりません。また、この情報は認定のためになぜ必要なのでしょうか?こうした疾患の発症の地域差を調べるためでしょうか。ある県で際立って発症が多いという情報は意義のある情報だと思いますが、一方で偏見や差別を助長する可能性もあり、厳格な情報の管理が求められます。それが意義も不明なまま、毎年、記載を求める理由は何なのでしょうか?

左側に黄色く色づけした部分は、心電図や胸部X線写真の所見を書くところです。一番上の項目、自他覚所見の変化を書く項ですが、その上に自覚症状の変化を書く欄があるのに何故、また自他覚所見とひとくくりにして書くのでしょうか。また、他覚所見もその下に心電図や胸部X線写真、心エコーの変化を記載する項目があるのにこの一番上の項目の意味が分かりません。黄色く色づけした部分の上段の自覚症状の変化の欄は前回申請時から変化を書くように求められています。では黄色く色づけされた部分の記載も前回申請時からの変化を書くのだと理解していますが、そうすると、どんなに悪い所見であっても前回と比較して変化がなければ変化なしになります。「変化なし」は所見がないという意味なのか、前回と比べて変化がないという意味なのか何年も記載していても意味がわからないのです。

右下に色づけした部分では血液検査結果の記載が求められます。こんな血液検査項目が認定に必要なのかと思うものもあります。一方、抗HCV抗体の記載も求められていますが、毎年の記載は必要なのでしょうか?C型肝炎と拡張型心筋症の関連が一つの研究テーマであることは理解できますが、毎年、記載を求める理由が分かりません。新たなHCV感染の有無を行政がチェックしているのでしょうか?抗HCV抗体の存在の有無も極めて敏感な個人情報です。それを毎年、行政が記載を求めるのであれば、その理由を開示すべきだと思っています。

認定に直接関係がない情報、一度記載を求めれば済む情報を毎年、求める意見書、非常に杜撰で問題の多い書類だと思っています。研究目的で申請書類に記載された情報を利用するとしたら、認定の目的とは異なる情報の利用ですから、患者さんに研究目的でも利用することがあると説明し、同意を得なければなりません。でなければ個人情報保護法の趣旨に反するとも考えます。毎年、この時期は、この行政の問題の多い書類を記載することで、この問題の片棒を担がされている気がして憂鬱です。

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