Tuesday, September 11, 2012

大隅半島における冠動脈治療の未来を心配しています。

ゆく河の流れは絶えずして、しかも もとの水にあらず。よどみに浮かぶ うたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。

有名な鴨長明の方丈記の序文です。先日のブログに書いたように58歳にもなるとこんな言葉が心に沁みます。2000年にPCIができない土地であった大隅半島にPCIの灯を燈すのだとやってきて12年、鹿屋ハートセンターを開設してもうすぐ丸6年です。開設準備前に少しでも多くのノウハウを吸収しようと、中京地区の有名なハートセンターの先生に会いに行きました。そこで多くのことを教えて頂いたことが鹿屋ハートセンターのスムーズな開設や順調な経営に結びついているのだと感謝しています。その先生との会話の中で、大隅半島のような人口の少ない田舎ではなく、鹿児島県で開設するなら鹿児島市内の方が良いのではないかと言われました。

私はすぐに鹿屋以外の選択はないとお話ししました。PCIができなかった土地にPCIの灯を燈した責任を全うするために開設するのであってビジネスとしての成功を目指して良いマーケットを探しているわけではないとお話ししました。とはいえ、2000年に私が大隅鹿屋病院でPCIを立ち上げた直後に県立鹿屋医療センターでもPCIが始まり、2006年に開設した当院は鹿屋市での3番目のPCI施設です。その後、もう一つのPCI実施可能な病院ができましたから現在では鹿屋ハートセンターを含めて4つのPCI施設が存在する街になりました。僅か10万人の人口の町に4つのPCI施設です。この結果、人口10万人当りのPCI実施件数は約750件と、千葉県松戸市に次ぐ全国でも有数のPCIの密度が高い街へと変わりました(図)。

しかし、結んでは消えるうたかたです。大隅鹿屋病院におられたPCIの学会認定専門医(CVIT専門医)の先生が関東に転勤されたので、現在鹿屋市で働くCVIT専門医は私一人になってしまいました。また、専門医が常勤で勤務していることが条件のCVIT研修施設・関連施設も大隅半島では鹿屋ハートセンター1施設のみとなってしまいました。58歳の私が大隅半島内の唯一の専門医で、常勤で研修をしている医師がいない鹿屋ハートセンターが唯一の研修関連施設です。このような状態で5年後、10年後に大隅半島内にCVIT専門医はいるのだろうかと危惧しています。

CVIT専門医になるためには認定医の資格を取得した後、3年以上の研修施設・関連施設でのカテーテル治療の実務がが求められます。鹿屋市を中心とする大隅半島で専門医が存在する研修施設を維持してゆくためには、専門医を養成するための長い期間を要します。困ってからの対策では間に合いません。

鹿屋ハートセンターは、私が果たすべき使命のゴールではありません。PCIの灯を燈した責任を全うしこの地にPCI施設を維持し続ける仕組みを作るのが私の使命であり目標です。この川の流れを枯らさぬよう、いづれ消えゆくうたかたである私は、新たに結ぶうたかたを求めなければなりません。

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