Tuesday, September 4, 2012

上質は細部に宿る God is in the details.

大隅鹿屋病院長時代に(株)イエローハットの創業者の鍵山秀三郎氏の始められた日本を美しくする会 掃除に学ぶ会の活動に積極的に参加してきました。トイレ掃除や街の掃除を通じて自分の心を磨こうという会です。こうした自分磨きを通じて、活動に関わってきた企業が立ち直ったという例も少なくありません。始めた当時は掃除するだけで経営が良くなるなら苦労はないなどと思っていましたが、この活動に関わってから、それまで困難であった大隅鹿屋病院の経営は立ち直りました。

上段の写真の通気口は掃除の会で訪れたある高校のものです。掃除にうかがってこんなに汚いところがあるのかとうんざりするところの代表と言えば大体が学校です。清潔な環境で生徒の健全な成長を図ると言っている学校でもこんな風に掃除もなされていないケースが多く、教育の現場は口先だけだとよく思ったものです。

下段の写真はある病院のトイレです。便器は何年も掃除されていないために尿石がこびりつき、異臭は容易には取れません。いくつかの病院でトイレ掃除をしましたが、このようなトイレを放置している病院も少なくありません。ホテルのトイレがこんな風であれば、2度と泊まりたくないと思わせる環境で患者さんは入院しておられます。しかしこうした病院でもこのような環境を放置したまま、「感染対策委員会」でマニュアルを作り、自分の病院の院内感染対策は万全だと言います。

口先だけで理想を語り胸を張りながら、細部は杜撰というのでは上質とは言えません。どこかの自動車メーカーのコピーで「上質は細部に宿る」というのがありました、上質であり続けるためには細部へのこだわりや努力が必要です。

当院に通院している方の胸部大動脈瘤が急速に大きくなってきたために手術適応と判断しました。本人やご家族に手術を受けるのであればどこが良いかと相談しました。どうせ手術を受けるのであれば日本で最も良い病院で手術を受けたいと言われたので神奈川県の某病院を紹介しました。本日、術後初めての当院受診です。返書を見ると、手術後に前下行枝に薬剤溶出性ステントの植え込みも実施したとあります。全く胸部症状もなく、手術にも耐えられたわけですから急いでPCIをしなくても鹿児島に帰ってからでも良かったのにと思いましたが、文句は言うまいと考えました。PCIの実施時のCDが添付してあったので目を通そうと見たところファイルが開けません。プロパティを見ると使用領域も空き領域もゼロです。CDを見ると焼いた形跡も残っていません。PCI後の2剤の抗血小板剤も4週間処方されており2週間後の肝機能や白血球数のチェックが必要だという説明も聞いていないと言われます。このため2週間ごとの採血が必要だとか、急な閉塞があった場合に夜間でもすぐに連絡するように当院でPCIを受けた方であれば退院時に受ける説明を行いました。

一流と思っていた病院に大切な患者さんを紹介しましたが、細部はこの程度でした。CDを焼いたのは事務か放射線科でしょうが杜撰な仕事は病院全体の価値を貶めます。紹介医に相談もせずに緊急でもない治療をやってしまうと紹介医との継続した良好な関係は保てません。また、PCIを上手に実施することは当然として、術後のDAPTの継続や、その副作用の説明、緊急時の対策の方が実はPCIよりも大切だという思いもあります。こうしたことに杜撰な病院が上質であるとは思えません。

組織全体で細部にこだわり上質を提供し続けること、今回の病院の対応を他山の石として気を付けなければなりません。

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