Tuesday, September 10, 2013

胸痛の自覚があり、受診される方と受診されない方 運命を分ける行動

鹿屋ハートセンターがある鹿児島県大隅半島の最大の河川は肝属川です。きもつきがわと読みます。大隅半島は日本一 養鰻業が盛んな土地ですが、肝属川の河口もウナギシラスがかつてはよく採れたそうです。しかし、最近は汚染が進み、時に九州で最も汚染の進んだ一級河川と言われることもあります。地元でも汚染を何とかしようと定期的に地元の有志が集まって肝属川クリーン作戦と呼ぶ清掃作業を行っておられます。

 今年のクリーン作戦に参加していた方が亡くなったと聞きました。作業中から胸が痛いと言われていたそうです。その話を知ったのはやはりクリーン作戦に参加されていた方が時々 胸が痛いと受診されたからです。身近でそんなことを見たので心配になったとのことでした。その方の冠動脈CTが図です。左冠動脈前下行枝に中等度の狭窄がありプラーク内への造影剤の染みだしを認めます。閉塞には至らないプラーク破裂と考えました。抗血小板剤であるバイアスピリンとカルシウム拮抗剤、スタチンを処方しました。禁煙もお願いしました。また内服していても胸痛があればすぐにニトログリセリンを舌下すること、強い胸痛があれば夜半でもハートセンターに電話連絡するように本人と奥様に説明しました。きっとうまくプラークを安定化させることができると思っていますし、万一、大きな発作があってもすぐに連絡して下されば対処できると思っています。

時々、胸痛があるという方の生死を分けるものは心配して受診するか否かだと思っています。胸痛の自覚があったにもかかわらず受診されずに亡くなった方、その方を見て受診された方でその後の運命は大きく変わります。どんなに優れた医師であっても受診してくれない方を治療することはできません。医師が心筋梗塞を治療して救命率を上げる努力をするよりも、本人が前駆症状の段階で受診することで救命率は向上します。心配して受診することが大切なのです。

冠動脈CTのなかった時代に冠動脈のプラーク破裂を見つけるのは簡単ではありませんでした。しかし、現在は本当に簡単になりました。人口10万人の鹿屋市内には4つのPCIができる施設があります。64列CTを持つ医療機関は5施設です。2000年まで医療過疎と言われた大隅半島はいまや国内でも最も循環器診療が濃厚に提供される土地に変わりました。この環境を活かして国内でも最も循環器診療に関して安心できる土地を作り上げたいものです。提供する側の準備は万端です。あとは受診する皆さんの行動次第です。

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