本日午前11時6分に当院外来に初診で受け付けの方です。胸背部痛の訴えでした。最上段の図のECGでは前胸部誘導でSTが上昇しています。急性心筋梗塞です。このECGは11:11に撮ったものです。救急車での受診では到着後すぐに心電図を撮りますがウォークインだと問診を聞き取ったりで時間がかかることもあり得ます。受付がすぐに症状のある旨を外来看護師に伝え、外来看護師はすぐに心電図を撮ってくれたので迅速な診断ができました。
1人でやっている外来中ですから、待っている方に断りを入れて緊急カテです。#6の完全閉塞で血栓吸引後にステントを植込み、症状も消失し安定しました。
緊急カテを終了し、外来に戻っても待たされたからと苦情を言う方は一人もおられません。かつては待たされるのなら帰ると怒って帰る方もおられましたが今は皆無です。待っておられた方の診察時にお待たせしたことを詫びても、逆にお疲れさまでしたと労われました。
同じような内容の投稿は過去にもしましたが、今回、改めて急性心筋梗塞に対する緊急カテーテルを投稿しようと思ったのは2014年4月から診療報酬が変更されるからです。
急性心筋梗塞に対するPCIも予定のPCIも手技料は同じでしたが来月からは急性心筋梗塞に対するPCIは、ステントを植込みを前提に考えれば24万3800円から34万3800円に大幅に点数が増えます。10万円のアップ、41%のアップです。このような大幅な診療報酬の増額は見たことがないと言うレベルです。救急で苦労する医師に報いる点数改定のように見えます。
一方、PCIの大多数を占める予定のステント植込みは、24万3800円から21万6800円への減額です。11%の減額です。1時間もかからない急性心筋梗塞に対するPCIは増額されても長時間かかる難しいPCIは減額です。
全PCIに占める急性心筋梗塞に対するPCIの頻度を考えればPCI全体で見れば診療報酬は減少するものと予想します。急性心筋梗塞に対するPCIだけを実施するPCI術者は存在しません。普段の予定のPCIを実施しながら急性心筋構想に遭遇すれば緊急事態に対処しているのです。緊急へのご褒美はあげるけれども、日常の報酬は減額するよというような形で診療報酬体系が構築されて緊急のPCIの診療体制は維持されるのでしょうか?普段の飯が食えないのに緊急に対応する形が各施設で維持できるような気がしません。安定したPCIが実施できる仕組みがあって初めて、安定した循環器救急が提供できるのだと思います。こんな仕組みを作った厚労省は現場を分かっているのでしょうか?
最下段の図はある要件を満たせば深夜や休日の手術料は大幅に増額するよという改定です。要件を満たせば160%の加算がつきます。加算の要件を満たす医療機関とは一定以上の救急入院を受け入れている病院です。当院のような有床診療所は該当しません。該当する医療機関で休日に急性心筋梗塞に対するステント植込みを行えば、89万3880円の手技料になります。この診療報酬の大幅な増額が深夜や休日に呼び出される医師やスタッフの給与に反映されればよいけれどと思います。また、反映されたとしても「これだけもらっているのだから夜間も休日も働け」と言われて疲弊したPCI術者は緊急に対応し続けることができるのだろうかとも思います。
決して充足されているわけではない医師数の中で、急性心筋梗塞に対する緊急治療はPCI術者の使命だと、文句も言わずに頑張っているPCI術者の仲間が全国にいます。そうした医師に報いるために診療報酬に「色」を付けましたよというのが循環器救急体制の構築だと厚労省が思っているとしたらあまりにもお粗末に感じます。需要に対する供給体制の構築のために国が実施する対策はお小遣いを増やすことだけですよという発想が理解できません。
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