ブログに書こうと思ってチェックしていた患者さんですが、3月間ブログを書いていなかったのでタイムリーではなくなってしまいました。
透析患者さんです。軽労作で胸痛があり、透析中に血圧が下がるとのことで紹介されて受診されました。回旋枝は完全閉塞ですが、左Radial Aを使用したバイパスが開存しています。Fig. 1のように前下行枝は90%狭窄ですがCTで評価したLITAは開存し 、native LADのFlowとcompeteしています。CTの情報があったためにこの造影を見ただけで選択的にはLITAは造影していませんでした。最初の診断カテ時にはバイパスが開存しており狭心症の理由が分かりませんでした。透析用のシャントは右にあります。
透析施設にお返しましたが、やはり胸痛が続きます。左Radial aがないために気付くのが遅くなりましたが左鎖骨下動脈の完全閉塞があり、造影上のsubclavian stealになっていることにしばらくして気がつきました。その閉塞の末梢から分岐するLITAがLADに吻合されているわけです。LADへの血流は右椎骨動脈からWillis輪を経て左椎骨動脈を逆流し左鎖骨下動脈にいたりそこからようやく内胸動脈を通りLADに潅流していたのです。
16年前にLADへのPCIが不成功に終わりCABGとなった方です。LADに対するPCIは容易ではないだろうと考えました。このため左鎖骨下動脈のangioplastyを行うことでLADへの潅流は良くなるだろうと考え左鎖骨下動脈に対するEVTをすることにしました。ワイヤーがクロスし、4.0mmバルーンがようやく通過し拡張した時点で手が止まりました。狭窄がLITAの入口部近くまで及んでいることに気がついたからです。このまま手技を続ければステントを置くことになりLITA入口部をJailにしてしまうと思ったからです。こうした考えに至って手技を終わりました。
もちろん、こんな中途半端な治療で狭心症が良くなるとも思っていません。患者さんの軽労作での胸痛は続きました。LADの狭窄を解除することがベストと考え、宮崎のS先生にRotablatorをお願いしました。そしてそのPCIに成功してもうすぐ6か月です。LADへのROTA後狭心痛は全く起きません。LADから鎖骨下動脈へのstealが起きて狭心発作がでないかと心配していましたが全くありません。16年間役割を果たしたLITAですが十分に働いたと思います。狭心痛がないのであればLADからのstealを心配して鎖骨下動脈を開けておくべきなんて考えなくてよいかと今は思っています。
CABG後、あるいはPCI後の経過が長い方が増えてきました。その分、冠循環のバリエーションが増えます。患者さんの治療戦略をパズルに例えると不謹慎かもしれませんが、そこに謎解きをするような興も確かに存在します。
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