Sunday, March 1, 2020

新型コロナのPCR検査が保険でカバーされ5000円だそうです。さらなる混乱が起きないことを願うばかりです。

一昨日2020年2月28日付の当ブログで、医師がこのくそ医者めと言われない社会になることを期待していると書きましたが、実はたいして期待していません。そんな風に医師を罵る人は少なくなることはあってもいなくなることはないと思っています。

やはり夜間の当番医をしていた頃ですが、夜中の3時頃に小学生の親だという方から今から頭のMRI検査をしてくれと電話がありました。どうしてMRI検査をしてほしいのかと尋ねると頭が痛いと言っている、ネットで調べたらヘルペス脳炎という怖い病気があって診断するのにはMRI検査が良いと分かったからだと言われます。子供の頭痛でも脳出血のこともあるので子供の頭痛で緊急性を要する病気がない訳ではありませんが、ごく稀です。ただこの方の場合意識はしっかりとしておりマヒもないとのことでしたのでそれならば夜が明けて小児科に受診し、ヘルペス脳炎が心配なのですが大丈夫でしょうかと話をして医師が必要と判断すればそれからMRI検査を受けたら良いとお話ししました。このお父さんは怒りました。娘が心配で今検査して欲しいのに何故できないのだと。もちろん開業医が夜間の急病の診察のためにボランティアでやっていた夜間当番ですからほぼすべての当番医にはMRIなんかありません。また、MRI検査が可能な病院でも、心配だから今からやってくれといってもMRI検査をいきなり午前3時にする病院もほぼありません。そんな話をしていると「MRIもできないのなら当番医なんかするな、くそ医者め」とやはり罵られました。

患者さんの行動は、夜間でも心配なら自分が思っている検査をどこでもしてくれるわけではないというような常識で決まっているわけではないのです。また、MRI検査をしてくれるはずだと期待していたものが期待通りに事が運ばないことで期待に対する裏切りに怒りを持たれます。この方の場合、ネットでヘルペス脳炎を見つけ、MRI検査が診断に有効であるという正しい知識を得る能力があったにも関わらずです。患者さんの行動を規定するものは医学的な常識やエビデンスではないのです。

新型コロナのPCR検査を保険でカバーし5000円の負担になるそうです。PCR検査を受けたいという方が、大勢 医療機関に行かれると思います。はいはいと引き受ける医療機関もあるでしょうし、症状もないのに検査しても無駄ですよという医療機関もあるでしょう。後者の場合、PCR検査をしてくれるはずだという期待を裏切るのですから、どんなに説明しても納得しない方から「このくそ医者め」と罵られると思います。

新型コロナに関するエビデンスは乏しい段階ですが、エビデンスを知り検査を実施する意義をよく理解している医師が罵られることになります。健康保険でカバーされて5000円で実施されると決まったPCR検査の普及が更に大きな混乱を起こさないことを願うばかりです。



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