鹿屋ハートセンターにはおよそ300名の心房細動患者さんが通院されています。開院以来、明日2020.10.1でまる14年が経過します。この14年、心房細動患者さんを見ていて感じることは、抗凝固やレートコントロールをしてその場の症状を軽くしたり塞栓症症のリスクを減らしても、長年のうちに心不全になり最後はつらい日を迎えるとということです。左心房が大きくなり心不全となった方にその後の改善を期待できる治療法はあまりありません。そんな感触を得て、三重の大西勝也先生が編集された「循環器診療プラクティス」には、不可逆的になる前にアブレーションをするべきだと思うと書きました。
そのような考えで、発作性心房細動患者さんだけではなく、比較的若く、左房径があまり大きくない方であれば慢性心房細動の方にも積極的にアブレーション治療をお勧めしています。とはいえ、アブレーションはアブレーションを得意とする医療機関に紹介して実施してもらっています。
上の心電図の方はアブレーション後、3年が経過した方です。3年間、抗不整脈剤も抗凝固剤も継続してきました。しかし、多くのアブレーションを実施する先生が方からは、安定していれば抗凝固も抗不整脈剤もやめればどうですかと言われます。そうした意見に逆らって内服を続けてきましたが3年も経過したのだからよいだろうと考え内服を中止ました。その後も再発がないことを2か月観察した後に、通院は不要ですよとお話ししました。その半年後に、臥床すると息苦しいと言われ受診されました。下の心電図がその時のものです。心房細動再発です。胸写では、CTRが大きくなり、エコーでも肺高血圧となっていました。幸いこの方は、アミオダロンで洞調律に復帰が可能で、CTRは元に戻り、心不全の治療薬を内服しなくても元気にされています。
アブレーションをされる先生は、抗凝固も抗不整脈剤も不要と言われるのですが、このようなケースはこの方だけではありません。内服を中止して再発される方は確実におられます。この方は心不全で発症しましたが塞栓症での再発であれば取り返しがつきません。
最下段の図は、CABANA trialの再発のデータです。薬物治療だけよりもアブレーションした方が再発は少ないものの少なくとも20%程度の方は再発しています。
循環器学会のガイドラインを見てもアブレーション後にいつまで抗凝固薬や抗不整脈剤を投与し続けるべきかという回答を私は見つけられませんでした。再発した時に失うものに対する不安とアブレーションをする先生方の中止しても良いという考えに挟まれて悩んでいます。
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