2010年12月30日木曜日

不安定狭心症の治療はタイミングが命です

Fig. 1 CAG on 23, Feb. 2009
  12/30 深夜0時過ぎに眠っていたのに急に胸が痛くなったとのことで来院されました。70歳代後半の女性です。2006年に切迫心筋梗塞で他院でLADとLCXにステント植込みをされています。当院では2007年1月にステント内再狭窄に対してCypher植込みを行い、その後は再狭窄を認めていません。Fig. 1は2009年2月に胸部症状の訴えがあったために実施したCAGの右冠動脈です。#3に25-50%狭窄を認めるのみです。
  
  深夜に来院されお話をうかがうと2週間前から労作時や冷気にさらされた時に胸痛があった由です。それが安静時にも胸痛が出現ですから不安定狭心症の典型的な経過です。Braunwald分類のClass IIIということになります。年末ということもあり、Conservative starategyではなくEarly invasive strategyとし、本日CAGを行いました。1年11ヶ月前には25-50%狭窄であった#3は90%狭窄です。
PROMUS stentを植込み良好な拡張でしたが、ST上昇が遷延しました。やはりConservative strategyが良かったのかもしれません。


Fig. 2 CAG on 30, Dec. 2010
  この方は脂質代謝異常でメバロチン(プラバスタチン)を内服中です。一貫してLDLは100mg/dl未満を維持してきました。脂質管理目標を達成しているだけでは解決にならないようです。十分な脂質管理を実施した上で、それでも発生する不安定化に対しては臨機応変な対応が必要です。いつかTVで心筋梗塞も急に発生するのではなく高血圧や脂質代謝異常から発生するのだからその管理を十分に行っていれば急性期のカテーテル治療など必要ないのだと言っている千葉県の県立病院の院長先生のインタビューを見たことがあります。この県立病院がある市の人口は6万人近くですが市内でPCIは1件も実施されていません。不幸なことです。

  この方の問題は、過去に切迫心筋梗塞で危機を経験したことがあるのに、典型的な症状が出現してもすぐに受診されなかったことです。ギリギリ間に合いましたが危ないところでした。冠動脈の病気は、ほうっておけば明日死んでしまう方でも、今日対処すれば多くの場合助かる病気です。治療を受けるタイミングが重要です。最も下策は典型的な症状があるのに様子を見ることです。どんな時に受診したらよいのかよくお話しなければいけません。すぐにおさまる胸痛でも甘く見てはいけません。

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