2010年12月13日月曜日

LCXによるACSに対してはconservative strategyで、LADのCTOに対してはreterograde approachで完全血行再建に成功した1例

Fig. 1 before PCI
  この方は6か月前に10年来続く労作時の胸痛と最近出てきた安静時胸痛を主訴に受診された方です。Fig. 4に示すように後壁のakinesisがあり後壁領域の虚血による急性冠症候群(ACS)と診断し入院して頂いた方です。
  Fig. 1に示すように回旋枝の高度狭窄と前下降枝近位部の完全閉塞を認めます。ACSの責任病変は回旋枝と考え、診断カテに引き続き回旋枝にPCIを実施し、PROMUS stentを植込んで良好な拡張を得ました。この時点で既に4日間のヘパリン化を行っていたのでdistal emboliやslow flowにもなりませんでした。conservative strategyです。
 Fig. 2は前下降枝の完全閉塞に対してPCIをreterograde approachで実施している最中のワイヤーの走行です。右冠動脈から中隔枝を介して前下降枝にwireを入れそのままLADからLMTを経てガイディングカテーテルまでwireを持ちこめたために前下降枝の拡張は容易でした。
Fig. 2 during PCI to LAD

 本日は6カ月後のCAGです。途中1か月ほど抗血小板剤の服用が途絶えました。来院されなかったのです。ご自宅に何度も電話を差し上げようやく来院して頂き、内服を再開。本日を迎えました。無症状ですがまた完全閉塞で側副血行から灌流 されているのではないかと悪いことばかり考えていましたが、Fig. 3のように前下降枝にも回旋枝にも全く再狭窄を認めませんでした。PCIの実施日に成功するのはもちろん大事ですが、6-8カ月後に再発し、再治療になるとしたら、そのPCIの価値は低いものになります。再狭窄がなくて初めてPCIに成功したという実感が湧きます。
F1g. 3 Six months after PCI
  PCI前にakinesisであった後壁(Fig. 4)はFig. 5に示すように壁運動は正常化しています。拡張した冠動脈に再狭窄がないこと、失われていた心機能が回復していること、運動しても症状もなく負荷心電図も陰性であること、すべての点で最良の結果でした。
Fig. 4 before PCI
 1か月の抗血小板の中断があっても再狭窄、再閉塞のなかった方ですから抗血小板剤を中止しても大丈夫のようにも思いますが、中止する勇気が私にはありません。こうした方では、OCTでステント表面を覆う内膜を評価した上で抗血小板剤を中止するのが良いかもしれません。今後の課題です。
Fig. 5 Six months after PCI

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