Fig. 1 Coronary CT on 15. Nov. 2010 |
この方は60歳代の男性で、10年前にMID-CABで有名な先生からLITA-LADのバイパスを受けておられます。このCABGの時点からRCAは完全閉塞であったとのことです。RCAの完全閉塞を残したままでLADのみにMID-CABを施行するというのも一つの考えかもしれませんが、臨床医の基本的な考え方は"Think Worst!"ですから、LADのバイパスでトラブルが起きた時にRCAの完全閉塞と相まって死に到る可能性を考えれば、乱暴な手術だったと思います。手術侵襲は小さいけれどもリスクの大きな手術であったと考えます。しかし、無事に手術が終わり10年を無事に過ごしたわけですから結果オーライとも言えます。ただ、ただ私はなるべく小さなリスクでかつ成功の可能性が高い方法を考えるべきだと思うので結果オーライは嫌いです。
Fig. 2 Before PCI |
強くはないのですが胸部不快があり11月にCTで冠動脈を評価しました。当院に通院を始められて初めての冠動脈評価です。LITA-LADは綺麗でしたが当然のように10年前から閉塞の右冠動脈は完全閉塞です。ところがFig. 1に示すように、意外なことに10年を経過した完全閉塞部位にほとんど石灰化がないのです。これなら高い蓋然性で再開通が可能と考えました。ここを通してもあまり予後の変わらないこと、再開通の目的の主たるものは症状を緩和するだけであること、成功の蓋然性は高いと思うが、10年の完全閉塞なので成功率は100%ではないことなどを説明した上でPCIをトライすることにしました。
Fig. 2はPCIの造影です。#3が完全閉塞でbridge collateralを通って末梢が造影されます。Fig. 3はstent植込み後の造影です。慢性閉塞部位はXT wireでほとんど通過可能で、一部硬い部分を3gのwireを使用しましたが、極端に硬いwireは不要でした。CT画像を見て予想したとおりでした。ただ予想と異なったのはバルーンの通過が難しかったことです。私が現在最も信頼を置いているMedtronicのlegend 1.25mmが通過しなかったのです。Tornousを使用しても通過せず諦めるかと考えた時に思いついたのが4FのTerumoのKIWAMIです。4 in 6にしてKIWAMIを閉塞部位近くまで持っていきlegendを持っていくと通過は容易でした。KIWAMIで使用できるstentには限りがあるのでstentingでの有用性は限局的だと思っていましたがバルーン不通過の際のbackupには非常に優れていると実感しました。
Fig. 3 After stenting |
諦めかけた時になぜ諦めなかったか、それはCTの所見があったからです。閉塞内に強い石灰化はなく必ず成功するはずだとの確信が諦めさせなかったのです。慢性完全閉塞に対するPCIに際してCT所見は戦略を立てるのにも成功の蓋然性を測るのにも重要な情報をもたらします。
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