Friday, January 14, 2011

1/10のブログのケースに対するPCIを1/13に実施しました。

Fig. 1 IVUS marking
  1/10のブログに載せたケースに対してPCIを本日(1/13)実施しました。当日実施していれば、2度目のカテは不要であったわけですが、内腔が結構保たれていたことに加えて、当日はstentingを実施するデザインが作れていなかったのです。

  症状があって来院されCTやCAGで狭窄を認めただけでPCIを実施してはいけないと思っています。その狭窄が症状の原因になっていると考えられ、その狭窄を解除することが患者の利益になると判断して初めてPCIの実施を決定します。この時、高い蓋然性で成功が担保されていなければなりません。先日のカテ時にはこの狭窄が症状の原因として間違いないかという点で自信が持てなかったことと、PCIを実施するとしても正しくLAD take-offにstentingできるかという点で治療のデザインができていませんでした。
Fig. 2 During stenting
  狭窄はCxとの分岐に接しており、そこにきちんとstentingできずに少し末梢に置いてしまうと必ずといってよいほど再狭窄を起こします。一方、proxymalすぎるとCxをjailしてしまいます。この方は左冠動脈優位ですからCxのjailは避けたいところです。しかし狭窄部位がIVUSでは確定できても造影で分離できないために微妙なstentの位置決めをどうするかのアイデアが前回の造影時に十分考えきれていなかったのです。もちろんその時にアイデアを持っていたとしてもリスクのあるPCIになるので十分な説明の上で実施するためにも猶予は必要でした。

  造影での分岐部の分離ができないため本日のPCIでは2つのMerkmalを用意しました。一つはIVUSによるマーキングで、もう一つはCxに置いたガイドワイヤーです。(Fig. 1)
Fig. 3 IVUS image before PCI
   2つのMerkmalを用意した上でpredilatation時にそっと造影してCxがバルーンで完全に閉塞していないことを確認し、同じ部位で今度はstentingを行いました。拡張中に少し流した造影剤がCxに行くことで完全閉塞になっていないことが確認できます(Fig. 2)。

   Fig. 3はPCI前のIVUS、Fig. 4はstenting後のIVUSです。stentは12時から2時方向に見えるCxにほんの少し顔を出すだけで思った通りのstent植込みができたと思います。

  PCIを実施する上で考えることは、まず拡張すべき狭窄が存在するかです。50%狭窄程度で症状もないのに拡張することは許されません。この方の場合、狭窄は1か所のみで、NTG舌下が有効な胸痛を繰り返しておられましたし、IVUSで80%程度のluminal stenosisが存在しました(diameter stenosisではありません)。
Fig. 4 IVUS image after stenting

  次に考えることは相当な安全性で、成功を期待できるかという点です。拡張が不成功に終わって、かえって病状を悪化させた時に拡張すべき狭窄があったから仕方がなかったという言い訳も許されません。成功に繋がるprocedure designがしっかりと構築できていなけれななりません。この方の場合、前回の造影から今日までの間にどうすれば造影で確認できない部位に確実にstentを置けるかを考え、designができたために実施を決意し、狙い通りのstentingができました。このdesignができていなければCABGに回すべきであったと思います。

  手技的な成功は得られました。この方の本来の成功はNTG舌下を要する胸痛から解放されることです。この後の経過を注意深く診ていきましょう。

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