Fig. 1 UCG |
Fig. 2 CT on 14. Jan. 2011 |
2010年9月30日にこのブログを立ち上げて以後、最も読まれた記事は なぜOptima CT660proなのかでしたが、次に読まれた記事は大動脈弁狭窄でした。3位は冠動脈肺動脈瘻でした。意外なことに上位は冠動脈の話題ではなかったのです。
本日の話題も冠動脈以外です。70歳代後半の女性です。1年2か月前の初診です。検診で指摘された心電図異常の精査を求めて来院されました。心電図は完全右脚ブロックだけでした。しかし、心エコーでは大動脈弁で100mmHg以上の圧較差を認めました(Fig. 1)。特徴的なSAMも認めましたが、弁下部の肥厚は認めるものの軽度です。圧較差が大きい割に弁下部以外に左室肥大は認めません。HOCM(肥大型閉塞型心筋症)とかIHSS(特発性肥大性大動脈弁下狭窄)と病名をつけシベンゾリンの内服をしてきました。
Fig. 3 CT on 14, Jan, 2011 |
しかし、何かこのままで良いのかという心の引っかかりがあり、本日CTで評価しました。冠動脈にはもちろん狭窄は認めません。Fig. 1で左室内をみると左室内に左室を分離する構造物を認めます。 角度を変えて左室像を再構成すると僧帽弁前尖に肥大した構造物を認め(Fig. 3)、この構造物が収縮期に左室流出路を閉塞するように動いているのが確認できます(Fig.4)。Discrete型の大動脈弁下部狭窄でした。
このようなケースの報告は1963年のJ Thorac Cardiovasc Surgにあります。50年近く前のpaperです。
Maclean LD: Subaortic stenosis due to accsessory tissue on the mitral valve. J Thorac Cardiovasc Surg 1963; 45: 382-388
Fig4. CT on 14, Jan. 2011 |
このケースでは左房の拡大も心房細動もなく自覚症状もありません。高齢ですし困っていることもないので手術的な修復は必要ありませんが、修復が必要な時、心エコーだけの所見だけで手術に踏み切るか、こうしたCT所見を持って手術に踏み切るかでは手術のデザインが自ずと異なってくると思います。カテーテル検査では圧較差の測定は可能です。しかし左室造影をしても弁に付いた構造物の評価や乳頭筋との関連を見ることはできません。こうしたケースの最善の検査方法はMDCTであると思います。
64列MDCTによる心臓の評価の有用性は冠動脈だけにとどまらないと言えます。循環器医が頭で考えるよりもブログのアクセスの動向の方がMDCTの有用性をより正確に物語っているのかもしれません。
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