明けましておめでとうございます。
元日は鹿屋市の救急当番でしたので、正月気分無しの2011年の幕開けになりました。A型インフルエンザの方10名ほどを含めて71人の受診でした。そんな年始でしたが1/2、1/3は少しゆっくりとさせて頂きました。この休みを使って少し勉強しました。テーマは12/23/2010に書いたstent fractureに関してです。
stent fractureは2002年に初めてcase reportとして発表され明らかにされました。
Cornary-Stent Fracture. Perth S et al. N Eng. J Med. 2002; 347: 581
その後、カテーテルを使った冠動脈造影での評価、冠動脈CTでの評価、IVUSでの評価があり、2009年にAutopsyでの評価が発表されました。もちろん最も高い頻度でstent fractureが検出されたのはautopsyです。2010年10月の鹿児島インターベンションカンファレンスにゲストで来て頂いた中澤学先生のpaperです。その中で示されたstent fractureの頻度は29%でした。
Incidence and Predictors of Drug-Eluting Stent Fracture in Human Coronary Artery. A pathologic Analysis. Nakazawa G et al. JACC 2009; 54; 1924-1931
それまでカテーテルを使った冠動脈造影での評価では1-2%の頻度とされていたわけですから如何に冠動脈造影がstent fractureを発見するのに無力かが分かります。では死亡後の検査でしかstent fractureは正確に評価できないのでしょうか。
64列MDCTで評価したHecht HSらの検討ではカテーテルを使った冠動脈造影では1.0%にしか検出されなかったstent gapが64列MDCTでは16.9%に検出されたと報告されています。またstent gapの存在とステント内再狭窄には関連があると報告されています。64列MDCT導入までstent fractureなどほとんど見たことがないと私は思っていましたが、見えていなかっただけでした。
Stent Gap by 64-Detector Computed Tomographic Angiography: Relationship to In-stent Restenosis, Fracture, and Overlap failure. Hecht HS et al. JACC 2009; 54; 1949-1959
IVUSでのstent fractureの評価はその解像度ゆえに困難だというのが一般的な考えです。ですから臨床的に最も有力なstent fractureに対する診断方法は冠動脈CTと言えます。stent fractureに関連したステント内再狭窄まで評価しようと考えれば造影剤が必要ですがstent fractureだけ検査するのであれば造影剤は不要です。stent植込みを行った医師としての責任を果たすために、負担の少ない造影剤を使わないCTでの評価を考えてゆきたいと思います。
中澤先生の論文では植込み後わずか172daysで29%のfractureの発生です(interquartile range (IQR) 31-630 days)。5年、10年と経過した場合の発生はいかほどになるのでしょうか。FDAや厚生省が求める4億回の加速試験がどれほど役に立っていないかの証明のように思えます。臨床の結果はメーカーの試験結果を否定しています。同時に行政の認可をも否定しています。ステント植込みに携わる医師として、また、関わる学会として臨床の結果はこうだったよと言うだけではなくメーカーや行政に発言しなければいけません。
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