Fig. 1 CT image 2 years after RCA stenting |
DMです。一時は6.6%まで下がったA1Cは7.4%に上昇し、最近のコントロールは悪くなっていました。胸部症状はありません。2年ぶりにCTで評価しました。Fig. 1に示すようにstent 内に再狭窄を認めませんが矢印の#3 に非常にdensity の低い狭窄を認めます。このため本日のCAGとなりました。
Fig. 2 Before PCI |
Fig. 2のCAGではやはりstent内再狭窄は認めませんが、CTで見えた部位は一部血栓がついたような強い狭窄です。proxymalの矢印の部位は強いhairpin curveです。前回stent植込みに難渋した記憶が甦ります。バルーンは持っていけるでしょうがstent は通過しないかもしれません。閉塞性の解離が生じた時にstentが持ち込めなければcriticalな状況が発生します。ご家族に非常にリスクの高いPCIになることを説明し、PCIを開始しました。
Fig. 3 During PCI |
AL1をガイディングカテに選択し、Runthrough Extra floppyで病変をクロスしました。TAZUNA 3.0mmX20mmは容易に病変を通過しました。この時、一緒にPCIをしていた鹿大のK先生には、ここでballoonを拡張すると後戻りできない、point of no returnだよと話しました。predilatation後のCAGがFig. 3です。解離に加えてslow flowです。STの上昇も遷延しています。distal emboli + dissection です。解離だけでも処理しなければなりません。選んだstentはMedtronic Driver 3.5mm X 15mmです。明らかに病変長は15㎜を超えていますがHairpin curveを超えるのに長いstentは無理だろうとの判断からです。DESははなから無理だと思っていましたが3.5㎜径であればBare Metal stentも悪くないとの判断もしていました。1個目のstent植込み後slow flowは更にひどくなり、血圧は50mmHgまで低下、心拍数も40です。2/21のケースではIABPを回避しましたが、今回はIABPを使うことを決断しました。IABPを入れるぞと宣言してから作動までカテの記録を見ると4分です。いつでも使える心づもりをしていてくれよと言っていたこと、この4年間のスタッフの習熟の成果です。
Fig. 4 After successful stenting |
IABP作動後、もう1個のDriver stent植込みを行いFig. 4のような結果になりました。STも若干上昇しているものの胸痛も取れ帰室できました。帰室後しばらくはIABPを作動させましたが、長期の作動は合併症発生の元です。3時間後には抜去しました。
PCI後、ご家族に心臓が止まりかけたこと、IABPで補助しながら最終的にはstent植込みに成功し、状態は安定したことを説明しました。
目の前に危機が発生している時に最も大事なことは危機を回避する最大限の努力をすることだと思っています。今回はうまく危機を回避できましたが、医療の現場では危機が回避できないことももちろん起こりえます。本日のケースで危機が回避できずに最悪の結果になった時、なぜ途中で逐次、状況を説明しに来なかったのだとお叱りを受けたかもしれません。そうしたお叱りを避けるために目の前にある危機に全力で立ち向かわずに、お叱りを受けるのを避けるための努力を10%でもするのは間違っていると思います。結果が悪ければお叱りを受けるのは当然です。それを恐れるより、最悪の結果を恐れて100%の力で危機を回避する努力をするのが正しいと思っています。このように考えると、爆発や被ばくの危険の中で、最悪の事態を避けようと勇敢に福島の原発で危機に立ち向かっている現場の専門家や作業員の皆さんに共感を覚えます。逐一、説明しろなどという声が現場に届かず、彼らが危機の回避に専念できることを願っています。取り返しのつかないことになるにしても、彼ら以外に危機に立ち向かえる者はいないのです。彼らが雑音に悩まされずに成功裏に危機を回避できることを願って静かに祈っていましょう。
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