Fig. 1 RCA before PCI |
1月前にPCIを右そけいから行ったために小さな硬結があり、本日は左そけいのアプローチです。腸骨動脈の蛇行が強く25cmのシースもキンク気味です。
Fig. 2 RCA during PCI, #4AV occlusion due to dissection |
LADは、解離を認めるものの血流は良好であり、予定通りRCAへのPCIを開始しました。Fig. 1はPCI前のものですが末梢の矢印がTargetです。近位部に透亮像が見えます。このような形態は石灰化の強い透析患者によく見られます。一見、狭窄は強くないのですが、強い石灰化を伴った狭窄であることがほとんどです。IVUS で見ると全周性の石灰化で偏心性病変です。ただ、IVUS が通過するのでそのままstentも通過するかもしれないと考え、#4AVのpredilatationを行いました。次いで、sten t植込みを図ったところやはり、近位部の矢印の部分でstentは通過しません。このため近位部にもpredilatationを行いstent植込みを行うことにしました。4㎜でpredilatationを行っていたにもかかわらず、stent はやはり矢印の部分を通過せず、やむなく入口部から4mmのVISONを植え込みました。これで矢印の部分にもstent植込みができると考えたのですがやはり通過できませんでした。こうしてstentが持ち込めないままに、もたもたしていると胸痛の訴えが出てきて、II, III, AVFでST上昇です。
Fig. 3 RCA After stent implantation |
Fig. 2に示すように、前拡張した#4AVが解離のためにほぼ閉塞です。潅流域が大きいため、血圧も下がり、除脈にもなり状況は危機的です。そもそもこのもたもたの原因は、左腸骨動脈の蛇行のためにガイディングカテのコントロールが十分ではなかったからです。蛇行が強い動脈にIABPを入れるのはハイリスクです。ステントも通過が困難です。ステントも植込み困難、IABP もハイリスクの状況で起死回生の一手と考えたのは右そけい穿刺でした。右そけいからMedikitの45cmシースを挿入し、ガイディングカテのコントロール性を改善した上でbackupのよいSAL1.0を持ち込みました。さらにこの中にTERUMOの5F Heartrail straightを入れ、stent の入っている#1を超えたところでFig. 1の近位部の矢印の部分に4.0㎜のステント植込みが可能になりました。この後、5Fカテを更に進めて#4AVにもステント植込みが可能となりました(Fig.3)。
胸痛はなくなり、STは正常化し、血圧も安定です。肝を冷やしましたが、危機を脱出です。
そうした考えで臨んできたからでしょうか。鹿屋ハートセンター開設後、4年間の約900件のPCIでIABPを使用したケースは10例あまりです。年間に数例のIABP使用ではもちろんIABPのスタンバイはペイしませんが、これも万一に備えた必要な損失と考えればよいことです。
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