Friday, June 3, 2011

スタチンによる十分な脂質管理下でも発症する急性冠症候群

Fig. 1 RCA in Nov. 2009
  64列MDCTを導入して、鹿屋ハートセンターの診療で最も大きく変わったことはスタチンを多用することになったことだと思います。2010年10月12日付の当ブログ「冠動脈狭窄との戦いは続きます」に記載したような、PCIをするほどでもない狭窄が高頻度で見つかること、また、LDLが100mg/dl程度でコントロールされていても狭窄が進行することがまま観察されることなどから、非有意狭窄であっても、冠動脈疾患の既往ありと判断して、LDLを100mg/dl未満にコントロールしようとの意思が働いているせいだと思います。
Fig. 2 RCA on Jun. 3rd, 2011
Fig. 3 IVUS image of RCA (distal)
Fig. 4 IVUS image of RCA (proxymal)
本日のPCIの方です。2007年に急性前壁梗塞で緊急PCIを実施し、BMSを植え込みました。その半年後に再狭窄がありCypher stentを植え込み、その後は再狭窄もなく順調でした。それからおよそ3年半が経過し、2011年5月になって1時間程度の胸痛を自覚するようになりました。Fig. 1は、2009年に造影したRCAですが#1に50%狭窄を認めます。160mg/dl程度の高LDL血症であったためにリバロを内服し、最新のLDLは79mg/dlです。Fig. 2は本日の造影です。前回の造影時に認められた狭窄からditalに向かって潰瘍性病変を認めます。Fig. 3、Fig. 4は同部位のIVUS像です。狭窄を取り巻くようにEcho densityの低い病変があります。DistalのLow density areaは解離でしょうか。おそらく破綻したプラーク部位に形成された潰瘍性病変です。
IVUSのimaging中にもSTは上昇し、狭窄は高度であることが分かります。血管径は4.0㎜ですからBMSでもよいかもしれません。しかし、やはりなるべく再狭窄はしてほしくないのでEndeavor stentを4.0㎜で後拡張して植込み、良好な拡張です。前回の前壁梗塞のダメージでLVEF=31%です。潅流域の広いRCAの近位部ですからAMIを発症しなくて幸いでした。MIを発症すれば、今以上の心機能低下は避けられませんから、致命的であったものと思います。

心筋梗塞の発症後、あるいは、狭心症でPCI後に、他の冠動脈病変の進行を予防するために積極的にスタチンを投与し、多くの方でLDLを100mg/dl未満でコントロールしています。しかし、本日のケースのような結果です。スタチン投与が二次予防に有効であるとの論文はたくさんありますが、スタチン投与だけでは不十分です。本日の方はステント植込み後のために2剤の抗血小板剤も内服していました。6.5程度にA1CがコントロールされているDMに対してはアクトスが処方されています。これ以上の内科的な治療は何をすればよいのでしょうか。

こうしたスタチンの十分な投与下にも発生するplaque ruptureを見ると、単純に心筋梗塞は「plaque ruptureが原因だよ」という理由にもならない説明だけではなく、何ゆえ、plaqueはruptureするのかというテーマを解明しなければと思います。
ちなみにこの方は、転居されたばかりでもなく、ご家族関係に問題もありません。発症のトリガーとしてのストレスは考えにくい方です。

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