Fig. 1 Changes of serum Creatinine |
ガイディングカテがエンゲージできなければそもそも治療は始まりませんし、バルーンやステントを導くガイドワイヤーが病変を通過しなくても治療は始まりません。バルーンが通過することも大事ですし、ステントの役割も大切です。これらすべての工程がうまく処理できて初めて治療は完結します。
Fig. 2 Lt-Renal Artery evaliated with MDCT |
慢性心房細動、狭心症でステント植込みを行った方ですが、初診時のCREは0.75であったのにFig. 1に示すように徐々に上昇してきました。このため腎動脈をエコーで評価しました。血栓化した腹部大動脈瘤内から分岐した左腎動脈のPSVが184.94cm、大動脈内の流速が遅いためRAR: 6.90です。この時点でCRE: 1.85です。徐々にCREが上昇する腎動脈狭窄であればPTRAの適応です。とはいえ、血栓化した動脈瘤から分岐した腎動脈の治療ですから簡単に手を出す訳にはいきません。十分に輸液をした後でCTで評価することにしました(Fig. 2。) 使用した造影剤量は40mlです。CT検査後にCREの上昇は、幸い、認めませんでした。CTでは血栓化した瘤内から下方に向かう腎動脈に高度狭窄を認めます。
Fig. 3 After successful stenting |
この失敗の結果、起きたことはFig. 1に示すように急激なCREの上昇です。3.35まで上昇しました。輸液で徐々に元の水準まで低下しましたが、このまま透析になってしまうのかと肝を冷やしました。このまま諦めるか、再度、手技を工夫して再挑戦するのかをご家族と相談したところ、良い方法があるのであれば再挑戦して欲しいと言われました。この時点では私にはよいアイデアはなかったのです。
10/15 小倉記念病院でQJETという頚動脈、腎動脈、下肢の動脈などの治療をメインとしたライブデモンストレーションが開催されました。この会に出席する目的として最も大切に考えていたことは、腎動脈治療の経験が豊富な北九州市立八幡病院の原田敬先生の知恵を借りることでした。お話をさせていただく前に原田先生のライブがあり、4.5FのParentを用いたスムーズでエレガントな腎動脈の治療を見せて頂きました。お話を伺う前にこれを見てこの方法だと決めていましたが、原田先生からもこの方法なら成功の可能性が高いのではと教えて頂きました。
10/21 左Radial approachで4.5F Parentを持ち込みました。下行大動脈に持ち込むのは簡単ではありませんでしたが。Fig. 3に示すようにGenesis stentを用いて拡張に成功しました。術後3日目の本日のCREは1.79です。最初の失敗の術前のレベルを僅かですが下回りました。
ガイディングのエンゲージからステントの植え込みまですべての過程が大切なこと、特に入口に立つためのガイディングカテのエンゲージの大切さを改めて認識しました。また、失敗に終わった時に失うものは何もしないことで失うことより大きいということも改めて肝に銘じました。
良い方法を教えて頂いた、原田敬先生に感謝です。また、再度の治療の機会を与えてくれたご本人やご家族にも感謝です。
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