Fig. 1 LAD evaluated with MDCT |
もうそろそろレセプトの症状詳記の締め切りなのですがずっと考えていました。詳記を書いているケースの1例です。新規発症の労作性狭心症で受診されました。即日、実施したCT像がFig. 1です。9/29付のブログのケースと同様そんなにdensityが低いわけではないプラークによる高度狭窄です。匿名様、第2の匿名様にご指摘いただいたケースと同様positive remodelingに見えます。すぐに入院していただきました。この方も9/29付のブログのケースと同様に2剤の抗血小板剤のローディング、ヘパリン化をすぐに開始しています。
Fig.2 Left Coronary Artery before NTG IC |
Fig. 1とFig. 3を比べたのが前回のケースです。狭窄度の解離の原因は血栓の溶解かspasmかの議論でしたが、このケースでは明らかにspasmです。CT撮影時に高度狭窄に見えたのは、硝酸剤を使用しないプロトコールでしたので、たまたまspasticな状態の時に撮影していたわけです。前回のケースと今回のケースのCT像はそっくりです。やはり前回のケースはspasmだったと思います。
Fig.3 Left Coronary Artery after NTG IC |
興味はありますが、第2の匿名様に注意されたような、spasm時のCT像を見るために誘発してCTを撮る様なまねはもちろんしません。しかし、spasm時にはこんな風な画像になるのだということは知っておいて悪くないと思っています。こんな風に写るのだと、今更ながらに思っています。
Fig. 4 IVUS image before PCI |
器質的な狭窄をきちんと評価するという目的であれば、ニトロの前投与は必須です。一方、spasmを含めた冠動脈疾患を見落としを少なくして見つけようと思えば、今回のニトロの前投与なしでの撮像で前回のケースも、今回のケースも失ったものはありません。spasmを含めた狭心症を見逃すくらいなら今回のような撮影法でoverestimateでもよかったような気もします。放射線科医が大半を占めるSCCT Japanの推奨は正しいのでしょうが、目的が違えば、必ずしも正しくはないとはならないでしょうか。とはいえ、当面はよく考えて自分なりの結論が出るまでニトロの前投与は続けるつもりですが…
本日、Steve Jobs氏の死が報じられました。今はWindowsしか使っていませんが、かつての私はMac使いでした。1997年に対馬と福岡徳洲会をテレビ電話で結んで遠隔PTCAなるものを始めた時に、このテレカンファレンスができる装置はWindowsだけだったので、この遠隔PTCAを始めるためにWindowsに変えました。初めて、Windowsを使った時になんと文字が読みにくいのだろうと違和感を持ちました。しかし、今、Macを見ると違和感を感じます。使いやすさや美しさを感じるのに重要な要素は慣れなのかもしれません。
Steve Jobs氏の訃報に接して、有名な2005年のスタンフォード大学の卒業式のスピーチを改めて読みました。
Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma, which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice, heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.
皆の時間は限られているから誰か他の人の人生を生きることで時間を無駄にしてはいけない。教条主義の罠にはまってはならない。教条主義とは他の人々の思考の結果に従って生きることだ。他の人の意見という雑音に自分自身の内なる声をかき消されないようにしよう。そして最も重要なことは、自分の心と直感に従う勇気を持つことだ。心と直感は本当になりたい自分をどういうわけか既に知っている。その他すべてのことは二の次だ。
医療の世界で自分の心と直感にのみ従って行動することは許されませんが、ガイドラインに書かれていること、エビデンスがあるということが絶対の真実であると盲信することも医師の良心に反する行動パターンなのかと思います。ガイドラインやエビデンスは知っていても、常に懐疑的な気持ちを持ち、真実を追い求める努力をすることが医師の良心だと信じています。
Stay hungry, stay foolish! Steve Jobs. 2005, @ Stanford University
いつも大変楽しく拝見させて頂いています、「9/29の第二の匿名」です。 すごくきれいな(意味深い)症例を・数多く経験されていることに感動してしまいました。 私も、ガイドラインは先生のおっしゃるようにがそれが全てではないと思っています。 しかし、いろんな人たちの知見・意見が集約された、最大公約数の、ミスを少なくするため、必要な共通言語知識を討論できるための物差しのように考えていて、以前は流し読みしていたころに比べて真面目に隅まで読むように心がけています。 読んだ上で使えるところ・そうでないところを咀嚼できたらな・・と思っています。 「亜硝酸剤を使用する・しない」で言えば、やはり使用すべきと思います。 VSAを想定するのであれば、「NTGが著効する安静時狭心痛なのに、NTG使用下の冠動脈CTAでプラークがなく狭窄なし」という患者さんにはCAGはAch負荷試験まで準備した心カテにすべきか(CAGしないときはVSAとして内服治療)と愚考します。 長文になり申し訳ありませんでした。 またご教授ください
返信削除討論できるための物差としての共通言語知識というのであれば、ガイドラインやエビデンスは意味がありますね。すごく意味のある表現だと思いました。9/30以後、ニトロとコアベータで撮影を続けています。16列から64列に更新した変化と同じように画像が改善し、このプロトコールにしてよかったと思っています。「9/29の第二の匿名」様のようなご指摘を頂くとブログを書き続けようと思えます。感謝です。
返信削除今日初めて拝見させて頂いた者です。
返信削除突然で申し訳ありませんが、先生に質問があります。
あくまでもこちらの勝手な申し出ですので、もしもお気を悪くされるようでしたら、削除していただいて構いません。
私は私立病院に務める循環器科医で、年間100例前後のPCIを行なっています。最近、近隣の病院でCAG→エルゴノビン負荷→PCIをおこなっていると言う噂を聞きました。
詳細は良くわからないのですが、毎月約50例のPCIの内6~10例ほどが施行されているとのことです。
スパスムの関与は確かにあると思うのですが、治療の対象となるようなケースがそんなに多いと思えないのですが、先生のご経験からみてどのように考えられますでしょうか?よろしくお願いします。
匿名様、コメントをありがとうございました。この件については話が長くなるのでブログに見解を書きました。
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