この程度の心機能の悪くない方が著明な喘鳴でリザーバーマスクでもSP02が70%しかないために気管内挿管を行いFiO2: 100%で人工呼吸器管理を行いました。利尿は良好で翌日には酸素化の状態は改善し、抜管できました。嵐のような心不全がやってきてすぐに去っていきました。このような心不全は腎動脈狭窄でよくみられます。Cardiac Disturbance Syndromeです。しかしこの方の腎動脈PSVは左右とも100cm/s以下です。

PCWP=28mmHg、 PAP=54/25/38でした。著明なPCWPの上昇があったので造影を躊躇いましたが、冠動脈が原因であれば待つことが致命的になると考えて造影に踏み切ったのです。しかし、前述のように主要冠動脈に有意な狭窄は認めませんでした。安易なカテコラミンの使用は危険と考えIABPを使用しました。

この仮説が正しいとすれば治療は困難です。主要冠動脈の狭窄による虚血であればカテーテル治療やバイパス手術で虚血は解除されますが、主要冠動脈の大部分をステントが覆いこれが虚血を引き起こしているのであればカテーテル治療もバイパス手術も意味がありません。ましてバイパスの吻合部になる部分もステントで覆われています。
多重債務ではありませんが、多重のステント植込みによる開存した主要冠動脈にも拘らず発生する虚血性の心不全のようです。私自身はこのようなステント植込みを行ったことはありません。常にバイパス手術というオプションを残すことを心掛けてきたからです。自分ならこんな治療はしないけれどと言っても仕方がありません。良い対処を考えなければなりません。
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