Friday, April 5, 2013

鹿児島大学 心臓血管・高血圧内科 大石充教授の講演を聞いて 進歩した画像診断や機能診断と病理の知見を活かしてより良い冠動脈病へのアプローチをしなければと再認識です。

5年前には小さなソフトプラークしか見えなかった高コレステロール血症のケースが、スタチンを内服しておらず、高度狭窄に進行していたと 昨日のブログに書きました。この昨日のケースをPCIが始まって間もない時期、1980年代に見ていたらどうだったろうかと考えました。負荷心電図のボーダーの所見で冠動脈造影をしていたかもしれません。造影の結果はきっと正常冠動脈という評価で、高コレステロール血症があっても当時はスタチンへの関心も低く、何も治療せずに放置していただろうと思います。狭窄の芽が出てきた高コレステロール血症なのに有効な治療ができなかったと反省するのは、CTで評価していたからです。

 診断の方法が増えると考え方が異なってきます。1980年代には冠動脈造影・負荷心電図、Tl-201 心筋シンチ位が評価法であったと思います。そしてその3つの評価法を用いても結論はきっと放置したケースです。

時代は進みました。昨日とは別のケースです。半年前に右冠動脈にPCIをしたケースの6か月後のCTがFig. 1です。左前下行枝に高度狭窄が見えます。半年前と同様の所見です。Fig. 2に示した冠動脈造影像も半年前と同じですが、半年前には非有意狭窄と判断し何もしませんでした。冠動脈造影での評価とCTでの評価ではどちらが正しいのでしょうか?今回はFFRを測定しました。結果は0.78でした。このケースでは心筋シンチをしていませんが、仮に再分布があり虚血と判定しても、この冠動脈造影像を見ればPseudo positiveと判定したかもしれません。0.78のFFRの値と心筋シンチでの再分布がそろえばTrue positiveです。冠動脈造影像をゴールデンスタンダードとすると所見はPseudoにもTrueにもなってしまいます。

Fig. 3はこのケースのIVUS像です。180度未満の石灰化と、IVUSカテがウエッジするほどでもない狭窄は見て取れます。

1980年代には冠動脈造影・負荷心電図・心筋シンチしかなかったのですが、現在ではそれに加えて冠動脈CT・FFR・IVUS・OCTが使用できます。冠動脈造影では見えなかったプラークの評価をCTが可能にし、小侵襲であるために経時的な変化も観察可能です。また造影では知り得なかった冠動脈の断層像の観察がIVUSで可能になり、OCTではより高い空間分解能で冠動脈が評価可能になりました。またFFRで機能評価も可能になってきました。こうした評価も併せて考えると、冠動脈造影だけの情報はいかにも少なく、アバウトな評価の上で冠動脈病をかつては治療していたのだと思います。

こうした新しいモダリティを用いて、冠動脈病の治療の考え方は異なってきます。本日、大隅循環器病懇話会(?)という会に今度、鹿児島大学心臓血管・高血圧内科の教授として着任された大石充先生が講演に来られました。病理から考える動脈硬化の診断と治療というようなテーマでした。刺激されました。亡くなった方の病理像から学んだことを、生きている患者さんで評価し治療できるようなモダリティを20数年前とは違って今は持ち合わせているのだから、この病理の知見と現在の評価法の組み合わせで、以前より格段に洗練された治療を提供しなければならないと改めて感じました。知見と技術は格段に進歩しています。それを活かすのは現場の医師である我々の責務だと再認識です。

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