ちょうど1週間前の土曜日にAbottさんのXience prime stentの2.25㎜が発売されるとのことで小さな研究会が福岡で開催されました。鹿屋に引っこんでから人前で話すことはほとんどなくなりましたが、久留米大学のU先生から何かを話せと言われたので出かけてきました。その場で話したことの備忘録として本日のブログを書いておこうと思います。
小径の血管に対するステント植込みはBare Metal stentであればバルーン単独のPCIよりも長期成績が悪いという考えもありあまり需要はありません。しかし、薬剤溶出性ステントであれば再狭窄を抑制する可能性が高いので良いのではないかとリリースされたものと思われます。既にBostonさんからはPromus element 2.25mmがリリースされています。
小径の血管でも再狭窄なしに拡張可能であれば、良いではないかとの考えもあるとは思いますが、基本的に小径の血管が潅流する範囲は小さく、あまりにも小さな潅流域の小径の血管はPCIをせずに内服でコントロールで良いではないかというのが私の基本的な考えです。2.25㎜のステントが登場することで重要度が低い小さな冠動脈までPCIが実施されてしまうのではないかと懸念しています。
では2.25㎜のステントには活躍する余地がないのでしょうか。2.25㎜のPromus element植込みを行ったケースです。Fig. 1は労作性狭心症で来られたケースの初回の造影です。LADの近位部に強い石灰化を伴う90%狭窄がタンデムに存在します。また、その末梢はdiffuseに狭窄が続きます。このケースにはロータブレーターが必要と考えいつもお願いする先生に治療して頂きました。Fig. 2はROTA-STENT後です。#6の狭窄は解除され再狭窄はないのですが末梢の狭窄は残っています。ROTAに紹介する時にROTAをして下さる先生は末梢をどう処理されるのだろうと関心を持っていましたが、あまりにも細い血管のために手を付けないという選択をされたのです。この選択は私も同意する妥当なものと思っています。(当時2.25㎜DESはリリースされていなかったのです)
このROTA-STENT後も労作時の胸痛は続きました。このためLADの末梢もPCIが必要と考え実施した後がFig. 3です。Promus elementの2.25㎜を18気圧で植え込みました。コンプライアンスチャート通りであれば2.5㎜になります。もっと拡張が必要であれば拡張限界径はこのステントの場合2.75㎜です。diffuseなこのケースのような病変の多くは硬く拡張には十分な拡張圧が必要です。一方で最近のDESであるPromus elementやXience primeはcompliantなバルーンにマウントされているので拡張に要するような高圧をかけると拡張径の目標を超えて拡張してしまい血管が破れるリスクが出てきます。それを恐れて低圧で植え込んでしまうと狙った拡張径は得られません。このケースでは2.5㎜径に拡張したいと思っていましたからPromus element2.25㎜を高圧で植え込もうと考えていたのです。福岡での発表では2.25㎜のDESを使ってPCIをする時の拡張目標は2.25㎜ではないと話してきました。この考え方ならばならば広い潅流域をもつびまん性の病変での2.25㎜DESの意義があろうと思っています。
Xience prime2.25㎜はPromus elementよりもなおcompliantなバルーンにマウントされています。この2.25㎜のXienceの構造は3.0㎜のものと同じですから最大拡張径は3.0㎜を超えます。この理解がなければ想定以上の拡張をしてしまうリスクがあり、そのリスクはPromus elementより高いと思われます。一方、びまん性の病変の末梢に合わせて2.25㎜ Xience primeを植込み、近位部になるにしたがって高圧をかけたり、大きなバルーンで拡張することで1本のステントでびまん性の病変に対処することが可能かもしれません。生体内ではその値通りには決して拡張しませんが、コンプライアンスチャートを理解し、最大拡張径を理解することで2.25㎜DESの使い道があると思っています。
使用する道具の特性を理解することで診療の幅が広がります。道具には罪はありません。使用する医師の側に罪や功が存在します。新たに使用できるようになった道具が患者さんにも医師にも福音となるようにその特性を理解し、良い使い方を考えていきたいものです。
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