
全然科学的ではありませんが以前に書いたケースと同様に嫌な予感がして冠動脈CTで評価しました。3枝の高度狭窄を認めました。右冠動脈は#1からdelayでtandemに狭窄は続きます。左冠動脈は#11からdelayです。また前下行枝は#6からdiffuseに90%狭窄です。重症3枝病変でした。
鹿屋市内には麻酔科が勤務する泌尿器科は存在しません。この結果をみて麻酔医の常勤する病院での手術をお勧めしました。紹介して下さった泌尿器科の先生もその判断に納得してくれました。

「あんたはアホか?(はっきり言い過ぎてごめんなさい。)手術をするのはあくまで主治医(外科医)と麻酔科医の判断です。循環器内科医は術前の心機能評価を依頼されたのであって、手術の可否は主治医と麻酔科医に委ねるのが常識です。それを依頼があったからといって、ノコノコ、判断に意見するから責任転嫁のリスクが発生するのです。心機能評価をして結果を客観的にご報告して差し上げる事で十分な仕事をしているものとお考え下さい。確かに、上記のような一例もあるでしょうが、それはリスクを省みてまで毎回行うべき方法ではありません。」
循環器医は心機能評価を依頼されただけだからその結果を客観的に報告するだけで良いのだ、余計なことをするから責任転嫁されるのだとお前はアホだと言われてしまいました。本日お示ししたケースが周術期に問題を起こしても循環器医は問題を予見できなかったのだから責任を問われなくてそれで良いではないかということでしょうか。しかし、これでは医師は自分の身を守れても患者の安全は二の次になってしまいます。自分がリスクを負ってでも患者の安全を考えることをアホと言われるのであれば私は今後もアホを続けると思います。外科医と麻酔科医が手術の可否を決めるのだと言っても麻酔科医はどのように可否を判断するのでしょう?この冠動脈の所見を知っていても知らなくても麻酔科医の手術の可否の判断は変わらないのでしょうか?
かつて急性心筋梗塞急性期の冠動脈造影は禁忌でした。しないことが常識でした。DeWoodの急性期の冠動脈造影、Rentropの冠動脈内血栓溶解療法、GruentigのPTCAいずれも発表当時は正気の沙汰とは思われませんでした。しかし、この非常識な試みがあって今のPCIの大きな役割が確立し、急性心筋梗塞症の死亡率は激減しました。現状を良しとせず、自らの医師としてのポジションを危機にさらしてまで挑戦するものが存在して医学、医療は発展してきたものと思っています。冠動脈疾患を持つ患者の非心臓手術というテーマはこれら先人の偉業程には大きなテーマではないかもしれませんが、自らに火の粉がかぶらないことを第一に考えるやり方は冠動脈インターベンションに関わる医師にはそぐわないと思っています。外科医も同じことだろうと思います。小さくなったとはいえ冠動脈インターベンションはリスクを伴う医療です。医師自身にかかるリスクを100%回避しようと思えばPCIなどできる筈がありません。自らに火の粉がかからないことを第一に考える日が来た時、私はカテを置きたいと思います。
麻酔科医は麻酔医と呼ばれることを嫌う方が多いです。
返信削除匿名様、ご指摘をありがとうございました。訂正します。
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