
下段の図は、今年2月に日本家族計画協会が発表した日本人の累積性交経験者が5割を超えるのは29歳だと誤報した発表を検証した、TBS Radioの荻上チキSession 22のWeb siteです。この日本家族計画協会の発表の中には26歳から29歳の性交経験率は77%という記事もあったにもかかわらず、累積が50%を超えるのは29歳であったと矛盾した発表も併せて行われました。この矛盾に気づいた番組スタッフから日本家族計画協会に問い合わせが行き、日本家族計画協会も間違いを認めました。しかし、訂正されるまでに大手の報道機関、毎日新聞や時事通信がこの間違った29歳という数字を記事にしていました。
大本営発表をそのまま報道した戦前の報道機関のように現在の報道機関も公の機関から示された数字を検証しないまま記事にしてしまう事があるようです。少し数字を見つめながら考えれば浮かんでくるであろう疑問が浮かばずに受け入れてしまうことを怖いと感じます。今風に言えばリテラシーが欠如している記者が大手メディアで情報を拡散する危険と言えるかと思います。そうしたいい加減を含む記事に惑わされないために読者である私たちもメディアリテラシーを高めなければと思います。
ある医学研究会で、演者の先生が平均85歳の患者群に対してAという治療を行ったところ、その後の死亡率は年率2%であったと言われました。であれば対象となった患者すべてが死亡するまでに50年が必要であり、135歳まで生きる人が存在するのかということになります。しかしこんなことがある筈がありません。1年間、経過を見て死亡率は2%であったということと、等しく年率2%の死亡率であるということは全く異なる概念です。こうした発表される数字を見て誤解することは医師のデシジョンメーキングの中にも多々ありうることのように思えます。
発表される数字を真に受けずに検証する力、解釈する力、その数字を活かす力を身に着けなければなりません。発表される数字に対するリテラシーを高めることはエビデンスの世界で生きる医師の責務です。報道機関は訂正記事を書けば済むかもしれませんがリテラシーの低い医師の誤解は患者さんにとって取り返しのつかない結果を招いてしまうからです。
0 件のコメント:
コメントを投稿