Thursday, October 14, 2010

犯人捜しに行き詰まったら現場に帰れ

Aug. 2010

Oct. 2010 RCA post stenting
 本日のPCIのケースです。2010年8月にAd hocでLAD take-offにPROMUSを植え込んだ方です。先週、ニトログリセリン舌下が有効な胸痛がありました。ステント植込み後の血栓性閉塞は重篤でニトロをなめたくらいでは効果はありません。少なくない頻度で突然死を起こします。特にLAD近位部です。ニトロが有効な胸痛があった原因がわかりません。ステントが入っていない血管にスパスムが起きたのでしょうか?
 犯人が分からなければ現場に帰れです。外来診察室で8月の造影を見直しました。鹿屋ハートセンター開設以来4年間の全ての造影やCT、エコー画像が瞬時に呼び出されます。右冠動脈#2によく見ると1本のスリットが見えます。8月にもこの病変を気にかけ3方向で撮影し50%狭窄と所見には書いています。きっと犯人はこの病変に違いないと考え本日造影です。造影所見は8月と比べても大差はありません。IVUSでこの病変を観察するとIVUSカテがウェッジするほどの強い狭窄です。やはりPROMUSを植え込んで終了です。
 かつてフィルムで造影を管理していた時代、あるいはCDで管理していた時代、電子カルテと連動しない画像サーバーで管理していた時代には古い画像を見直すにはそれなりの手間をかける覚悟が必要でした。忙しい業務の中であとで見ようと思っている間に忘れてしまうこともあります。それが瞬時に患者さんと話しながら診察室で呼び出せると犯人を見つけるのは容易になり、判断ミスの可能性は低くなります。この造影をすぐに見ることができない環境ではスパスムと考えカルシウム拮抗剤を追加するだけの判断をしていたかもしれません。犯人捜しに行き詰ったら現場に帰れです。間違っても根拠なしにストーリーを作り上げてはいけません。
 とはいえ、8月に気付くべきであったとも言えます。残念なことにこのケースでは64列MDCT導入前の初診の方で冠動脈をCTで評価していませんでした。

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