投稿のエディターがうまく立ち上がらなかったために、またまた投稿の間隔があきました。今回は古いエディターでの投稿です。
鹿屋ハートセンターは2006年の10月にオープンしましたが、前の職場は2005年の10月に退職したために1年の準備期間という浪人時代を過ごしました。この間にも、狭心症だけれどもどうしたらよいかと頼られるケースがいくつかありました。今回の図の方もそうです。近くの病院で左冠動脈主幹部の狭窄を指摘され、ステント植込みを勧められていました。重大な部位の狭窄で分岐部へのステント植込みになるために関東から有名な先生に来てもらって治療してもらうという話になっていたそうです。しかし、その有名な関東の先生は、飛行機に間に合わないから自分たちでやっておきなさいと言ってその先生自身が治療をせずに帰ってしまったというのです。難しい治療だからと有名な先生に来てもらったのに地元の先生にしてもらってもよいのかというのが私に対する質問でした。左の図は、2011年4月のものですが、6年前の冠動脈も同様でした。左冠動脈主幹部に確かに狭窄はあるものの有意とは言えず、症状もないために治療の必要がない旨をお話ししました。有名な関東の先生は、私もよく知っている先生ですが、飛行機の時間にかこつけて、するべきではないPCIを避けたのだろうと私は理解しました。この方は、その後、2006年10月から鹿屋ハートセンターに通院中ですが、右冠動脈狭窄による狭心症でPCIを実施したほかは、この主幹部由来の狭心症の発作は1回も発生していません。
この方は、不要なPCIを避けることができましたが、PCIの実際の現場では、不要なPCI、不適切なPCIが実施されていることに間違いはありません。米国の調査では非急性のPCIのうち12%が不適切なPCIの実施であったと最近のJAMAで報告されました。
Chan PS et al. Appropriateness of Percutaneous Coronary Intervention. JAMA. 2011; 53-61
米国の民間保険会社は、営利のために必要な治療であっても保険による給付を渋るとよく言われていますが、その中でも12%の不適切なPCIが実施されているとすれば、公的な保険の日本の場合はもっと不適切なPCIが実施されている可能性があります。実際、保険の審査では適応があったか否かを支払基金から問われることもありませんし、冠動脈の画像を添付して詳記を書いても、画像など要らないと言われる始末です。不適切なPCIを防ぐシステムが日本に存在しません。 この検証がない日本のシステムが生んだ犯罪が奈良の山本病院でのなんちゃってPCIであったと考えています。
平成23年7月20日、 厚生労働省医薬食品局安全対策課長による課長通知(薬食機発 0720第2号)が出されました。この中で、従来禁忌・禁止とされた保護されない左冠動脈主幹部に対するPCIや急性心筋梗塞に対するPCIでの薬剤溶出性ステントの使用が禁忌から外されました。この結果、急性心筋梗塞や保護されない左冠動脈主幹部への薬剤溶出性ステント使用によるPCIは激増すると思います。DESの使用によって、LMT病変であってもDESが有効であるという結果が出ることを私も願っていますが、最初に示したようなケースにまで治療が広げられると、LMTに対するPCIの健全な治療法としての発展は阻害されてしまいます。今回の画期的な課長通知が出たからこそ日本のインターベンション医は、節度を持って適切なPCIを実施してほしいと切に願っています。
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