Monday, April 2, 2012

消費税増税議論と診療報酬改定

30年以上前の学生時代に少し、パチンコをしたことはありますが、基本的に賭け事はしません。麻雀のルールも知りませんし、公営ギャンブルもしたことがありません。それは、物心ついた頃より父親が、何があっても賭け事などするなとうるさかったからです。

賭け事をして確実に儲かるのは胴元です。寺銭という掛け金の何割かを勝ち負けに関係なく徴収するからです。この仕組みは公営ギャンブルも同じです。ギャンブルをしないので知りませんでしたが、興味があって公営のギャンブルの寺銭を調べてみました。1億円の収入があった時に勝った人に還元されるのは74.8%だそうです。競馬も競艇も得た当選金に所得税や住民税がかかるそうで実際に受け取るのはかけた人の総支払額の58.5%だそうです。実効還元率というそうです。たくさん賭ければ賭けるほどこの58.5%に近づくわけですから勝ち目のない遊びです。でも熱中する人がいるのは時に掛け金よりも多くを得るからだと思います。ハイリスク、ローリターンですが時にハイリターンというのが賭け事の原則のようです。実効還元率は宝くじで45.7%、サーカーくじで49.6%ということですから公営ギャンブルよりもえげつない搾取がそこにあります。

何故、私が還元率に興味を持ったかと言えば消費税増税が閣議決定され、国会での議論が始まったからです。税は富の再配分ですから、税として徴収されるお金もあれば、税から得るお金もあるわけです。個々で言えば、収入の少ない人は収める税額が少ないわけですが、税によるサービスはほとんど高額納税者と同じかより多くを得ます。住民税、所得税を支払っていない人でも、税によって運用される自衛隊や外交によってもたらせれる平和の恩恵を享受します。また、税で作られる道路や学校の恩恵を受け医療も支えられます。納税額よりも受け取るものの方が多い筈です。高額納税者だからと言って高級な給食や、豪華な道路を使えるわけではありませんし、より良い医療を受けられるわけではありませんから、納税額に対して受け取るものは少なくなります。これが富の再配分だと理解しています。貧しい人ほど消費は少なくなるわけですから消費税率が上昇して多くを支払うのは富裕層であり、多くを得るのは貧困層です。これで税の再配分の原則は担保されるように思います。税の問題は負担がいかに増えるかではなく、増えた税収がどれほど、どのように分配されるかが大切なポイントだと考えます。負担が増えることばかりを考えるのは税の役割を理解しない議論だと思っています。

個々で見れば富裕層は還元率が低く、貧困層は還元率が高く場合によっては還元率は100%を超えます。では総体としてみればどうでしょうか。国家公務員給与は6兆円程だそうですから、これを事務経費と考えれば約40兆円の歳入のうち15%が消えてしまうので他の全額が還元されても85%の還元率です。国債の利払費が11兆円程度ですからここでも約30%が消え、55%の還元率になります。更にここに無駄な歳出が発生すれば、還元率はさらに悪化します。10万円の税金を納めても自分たちに使われる費用が5万円を切ったり4万円を切ったりしては素直に税金を払いたくはなくなるのは自然だと思います。

今回の診療報酬改定を「税と社会保障の一体改革」のために一歩踏み出した改定だと厚労省は言います。私には今回の改定が税と社会保障の一体改革のために一歩踏み出した改訂のようにはとても思えません。厚労省のいうことをそのままおうむ返しに解説する医療者もいますが、私にはよほどお目出度い人か、厚労省のちょうちん持ちの人としか思えません。

増税後の増収した税がどのように使われるかが明らかにされない限り、借金を重ねる構造を作り上げてきた政府にどうぞ増税して下さいとは言えないと思っています。

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