Wednesday, April 4, 2012

冠攣縮性狭心症の造影をしながら考えた冠動脈造影の適応

Fig. 1 After Erogonovine administration 
Fig. 2 After NTG I.C. administration 
60歳代半ばの男性、安静時の胸痛を繰り返すことを主訴に受診されました。初診の診察室でも「胸痛がやってきた」と言われるので目の前でニトロペンを舐めて頂きました。すぐにスッと胸痛は軽快しました。不安定狭心症か冠攣縮性狭心症と考え、冠動脈CTで評価しました。結果は、有意狭窄なしでした。このためヘルベッサーR(ジルチアゼム) (100) 2cap 2Xの処方で安定したら退院と思っていましたが、内服下でも繰り返し胸痛があります。このため、本日CAGです。ヘルベッサーの内服下にもかかわらず、エルゴノビンの冠注でFig. 1のように#4に強いスパスムを認めました。この時、胸部圧迫感の増強も出現しました。ヘルベッサー抵抗性の冠攣縮性狭心症です。シグマート(ニコランジル)を追加処方し胸痛の経過を見ていくつもりです。

私は最近、あまり冠動脈スパスムの誘発をしてませんでした。ニトログリセリン有効な胸痛があり、冠動脈CTで有意狭窄がなく、カルシウム拮抗剤(CCB)で胸痛が抑制されればそれで良いではないかと考えていたからです。しかし、本日のようなケースも存在します。教科書的にもジルチアゼムやニフェジピンでコントロールできない冠攣縮性狭心症は知られているところです。こうしたケースではやはり冠動脈造影+スパスム誘発試験が必要です。

冠動脈CTの出現によって冠動脈造影の適応は大きく変わったはずです。有意狭窄があるかないかだけを見る目的の冠動脈造影やPCI後のフォロー目的の冠動脈造影はもう不要です。では、冠動脈造影の現時点の適応はどのようになるでしょうか。

①本日のケースのような冠攣縮性狭心症でCCBですっきりとコントロールできないケース、②冠動脈CT上有意か否かが微妙なケース この場合 FFRでPCIの適応を決定するのがカテを入れる主たる目的になります、③どう処理しても狭窄が評価できない強い石灰化病変やそこに植え込んだステントの評価、④腎機能が悪く造影剤の使用を最少にしたい状況でしょうか。

最近、時々見かける2剤の抗血小板剤(DAPT)の内服を継続するか否かを決定するために冠動脈CTで有意な再狭窄がないと分かっているのに、カテを入れてOCTで内膜のはり具合を見るというやり方に私は賛同できません。DAPTの継続の可否を決めるのにそこまでするのは大袈裟だと思うからです。プラビックスであれば月額8千円程度の薬剤費を少なくするために30万円もかけて検査するのはバランスが悪いような気がします。

冠動脈造影検査の適応に関して新しいコンセンサスが必要です。

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