Fig. 1 before PCI |
Fig. 2 nine months after BMS implantation |
現在の京都大学の心臓外科教授の坂田隆造教授と初めてゆっくりとお話しさせていただいたのもこの機会でした。坂田先生は当時も優れた心臓外科医として有名でしたが、先生は10年後・15年後に冠動脈が再び悪くなった時のことを考えてグラフトを置くのだと言っておられ、それが深く印象に残っています。
進行性の病気である動脈硬化に伴う冠動脈病は一度の治療でうまくいっても、年月が経過するうちに健常だった冠動脈が悪くなってくることは珍しくありません。その場の成功だけではなくその後の患者さんの予後を改善するための準備を手術時にしておくというのは、この病気を深く理解し、患者さんの未来にも思いを馳せる坂田先生の優れた感性と心打たれました。
こんなに困難であったPCIに成功した、成功に導いたtipsはこれだったという話はよく聞きます。しかし、少なくなったとはいえ再狭窄はPCIにとって最も大きな問題ですし、再狭窄が起きれば困難であったPCIの成功もその価値が小さくなってしまいます。また、将来の病変の進行を意識したPCIの戦略の構築も内科的な介入をも行うインターベンショニストには重要です。
Fig. 1は2011年9月26日付当ブログ「非心臓手術前の心臓評価 二重基準の狭間でさまよう循環器医」と2011年9月27日付当ブログ「非心臓手術前のPCIの実施 実施前の揺れる心と実施後の心構え」に書いたケースです。非心臓手術を控えておられたためにBMSの植え込みを行い、PCI後3週間で抗血小板剤を中断し、手術を受けて頂きました。周術期に問題があればすぐにご連絡を頂くように外科にはお話ししていましたが、何事も起きませんでした。F1g. 2は9か月後のCTでの評価です。再狭窄もなく良い経過でした。
この経過から、非心臓手術前のPCIはこのスタイルでやればよいのだとは言い切れません。たまたま、良かっただけかもしれないからです。しかし、PCI時の成功、その後の非心臓手術の成功、再狭窄の回避と長い経過で戦略の正しさを検証していくことは重要だと思います。しばらくは、当ブログで戦略を紹介したケースのその後を検証してゆきたいと思っています。
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