2012年6月27日水曜日

新しい船にも古い水夫を ワーファリンと新規抗凝固薬の棲み分け

図 1 鹿屋ハートセンターの心房細動患者のCHADS2
古い船には新しい水夫が
乗り込んでゆくだろう
古い船を 今 動かせるのは
古い水夫じゃないだろう
なぜなら古い船も新しい船のように
新しい海に出る
古い水夫は知っているのさ
新しい海の怖さを

図2 eGFR別のPT-INR
 吉田拓郎の「イメージの詩」の一節です。ダビガトラン(プラザキサ)やリバロキサバン(イグザレルト)という新しい船が心房細動による塞栓症予防のために使われ始めました。心房細動による塞栓症という海を古い船であるワーファリンや新しい船であるプラザキサやイグザレルトはどう航海してゆくのでしょう。

図1の鹿屋ハートセンターに通院されている患者のCHADS2分類では、CHADS2のスコアが上がるにつれて年齢は上昇し、eGFRは低下してゆきます。どのグループも平均のPT-INRは良好です。荒海でも凪いだ海でもINRは良好にコントロールされています。

図3 抗血小板剤内服患者のPT-INR
よく新規抗凝固薬はレディーメードの服に似て、ワーファリンはオーダーメードの服に例えられると表現されます。決まった量の処方をしておけばそれなりの塞栓症予防効果があり、出血のリスクも高くないと言われています。しかし、年齢が高くなっても、eGFRの低下がみられる腎機能の低下があっても同じ量の処方で、この図1のような良好なコントロールは得られるでしょうか。いくらGPSが装備され、自動操船が可能であっても水夫が不要になることはないと思っています。

図2は新規抗凝固薬の慎重投与が勧められるeGFRの低下例におけるワーファリンのコントロールです。ワーファリンを処方する時にいちいちeGFRはチェックしていませんが、eGFRが50以上の群では平均のPT-INRは1.97±0.42と良好なコントロールであったのに対して、eGFRが50未満の群ではPT-INRは1.75±0.54と控えめでした。

図3の抗血小板剤の内服の有無で見た当院の心房細動患者のPT-INRは、非内服患者でPT-INR: 1.96±0.44、内服患者でPT-INR: 1.82±0.51とやはり内服患者でINRのコントロールは控えめでした。図らずも出血のハイリスクの群のワーファリンコントロールは控えめだったのです。やはり荒れた海には古い水夫の経験によるコントロールが必要だと思っています。レディーメードでは厳しいのかと思っています。

一方、eGFRの低値群、抗血小板剤内服群の至適INR達成率は低いままです。CHADS2が高く、低eGFRで、抗血小板剤も内服しており、TTRも低値というグループが存在するようです。これらのグループの塞栓症を予防するためには、新規抗凝固薬の容量調節が必要ではないかと思っています。新しい船にも経験豊かな古い水夫が必要だと思います。

吉田拓郎が「イメージの詩」を書いたのは20歳代前半だそうです。この若さが古い船にも新しい水夫と言わしめたのでしょうか?

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